どこにいても

□第十九話
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キッチンで飯作うてくれとる刹那を見る。
俺んために作うてくれとるんやと思うと嬉しゅうてしゃあない。せやけど向けられとる後ろ姿を見ると妙に淋しゅうて刹那に近付いた。
横顔を見たったら目線は手元にいっとるんやけど、どっか考え事しとる様な呆けた顔しとった。

後ろから覗き込む様に話しかけたったらえらい驚いとった

『もう、座って待ってて!』
「ヘイヘイ」

耳まで赤あなっとる刹那。可愛ええ子は苛めたなるっちゅうんはホンマやな。

『お待たせ、出来たよ!』
と飯を持ってくる刹那を見れば自然と笑みが溢れた。



…………―――


『ねぇ真子、何かあったの?』
「何かて?」
『その、口数が増えたってゆうか機嫌がいいってゆうか……最近の真子何かそっけなかった感じがしたからさ』

刹那も感づいとったんか…

「…………」

今俺の思おとる事をゆうたらいいか悩んだった。刹那に言わなあかんと思うてもなかなか言葉が出てこない。

『言いたくないんだったらいいんだ!変な事聞いてごめんね?』

あぁ、ひよ里がゆうてたんはこの顔か。えらい悲しそうな顔しとるのに笑っとるこん顔。
胸ん中が締め付けられる。こない顔をさせたいわけやない……

「ちゃうねん。ちゃうねん刹那…」
『えっ、真子?!』

そないな顔すんなや……

俺は刹那を抱き締めとった。刹那ん顔を俺の胸に隠すように。

『ねぇ真子、一体どうした「刹那黙って聞いてくれるか?」

刹那の言葉を遮って俺は言うた。
刹那はわかったと俺に身を任せてさっきまで固まっとった体の力を抜いた。

「……俺なゆうてなかったんやけどユイと恋人やってん。ほんであん時、ユイが死んだ時また俺んとこに戻ってくる言うた言葉を約束にしてずっと待っとった。
しゃあから最初刹那が来た時はユイが戻ってきんやと思うた。また元に戻れるんやって。せやけど違うた、お前はユイやのうて刹那やった。
刹那を知れば知るほどユイとは全くの別人なんやと思うた。アホやしドジやし、いつん間に目ぇ離されなくなっててん。
俺、そんなんは大事な仲間やからそうなったんやって思うとった。せやけど刹那が泣いたあん夜……俺は刹那を仲間としてやなく一人の女として見とるんに気付いた。頼れる奴もおらんこないなとこに来て不安やったやろ?そないな刹那を守りたいて支えになってやりたいて思うたんや。


………思うたんやけど俺にはユイとの約束があった。こん気持ちを認めてしまあたらユイを裏切ってまう思うて気持ちに蓋をした。必要以上に接しなければ気持ちも膨らむ事はないて、それからあんま刹那と関わらんようにしとった。
けどそれがあかんかったんやな……ひよ里に怒られてもうた、刹那を悲しませるなて。ラブにも同し事言われてな、もう俺はどうしたらええかわからなくなった。そしたら自分の気持ちに正直になれ言われたわ。後悔せんようにて。



俺は刹那が好きや


それで決めたんや。
ユイとの約束は必ず果たす、今までの思い出も忘れん。けど今の俺は刹那が好きやから側にいて守ったる、たとえ刹那に好きな奴がおっても俺はそうするんやって」

話とった間刹那は相槌を打つことなく黙って聞いとってくれた。

これが俺の嘘のないホンマの気持ち。刹那に好きな奴がおってもええ、俺の事を好きやなくてもかまわん。こない自分勝手な気持ちを聞いてくれただけで十分や。

「おおきにな刹那。黙って聞いとってくれて」

抱き締めとった腕を離そうとしたら逆に刹那に抱き締められた

『今度はあたしの番だよ?何も言わずに聞いてね』

と言うた刹那ん声は少し震えとった。




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