どこにいても

□第八話
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「ありがとうございましたぁ」

店ん中で店員の声が飛ぶ

ここは半年前から世話になっとる洋食店。個人でやっとるこじんまりした店で店長も従業員も皆えぇ人ばっかりや。そんなえぇトコ辞めるんはなんとも言われへん気持ちになる

「真子」
「何ですかぁ?」

テーブル拭いとったら店長に声掛けられた
バイトが始まる前店長に今日で辞めるちゅう事を伝えた。店長は真子が辞めると寂しくなるなぁてこっちが寂しくなってまう様な顔して笑っとった。

「時間だぞ?」

時間を見ると七時を少し過ぎとった

「もうそんな時間になっとったんですか。忘れてましたわ」
「嬉しい事言ってくれるな」
「ホンマの事ですから」

全部のテーブルを拭き終わってタオル洗おうと流しに向かうと

「今までありがとな。お疲れ様」

と店長が俺ん肩叩いてゆうた

「ホンマすいません。急にこんな事になってもうて何てゆうたらいいか…」
「気にするなって!事情があるんだろ?俺が気にしてるのはこれから女性客が減って売り上げが下がるかもしれないって事くらいだよ!真子は女ウケ良かったからな」
「いやそんなん無かったし、店員の顔でお客さん入ってたのとちゃいますやん。ここの店長ん腕がええからお客さん来てくれてたんやで。せやから売り上げは大丈夫ですやろ」
「ホントにお前は!」

最後までいい奴だな!と腕で首をガッチリホールド。頭をグリグリされてもうた

「イテテテテ!痛いて!」

痛さで少し涙が出てもうた

「…………真子、いつでもここに来ていいんだからな」
「……おおきに、店長…」


店長のおっきな懐を感じながら仕事を終わらせて店を出た





今日の夜はめっちゃ晴れとった。あぁ星綺麗やなぁ思とったらなんや空中散歩したなった。

「夜やしええやろ」

人通りの少なぁ路地裏に入って飛んだ。

髪の間通る夏の涼しい風が心地えぇ。
都会の喧騒がここまでは聞こえんかった。静かやな、和むわぁ。



プルルルルル――

無粋な機械音。誰やろ。

「もしもし〜?」


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