MAGIC

□疎遠行為
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椅子から立ち上がり、すぐ隣のベッドまで行き見下ろしてみる。

靴はだらしなく脱ぎ捨てられていて、毛布に抱きつく形で丸くなっている。
髪なんてお構いなしに、無造作に散らばっている。

(なるほど、だからこいつには頑固な寝癖が付くわけだ。)

屈んで顔を覗き込んでみる。



(……アホだ。アホさが滲み出ている。)



何となく頬を突いてみる。

くすぐったそうに「んー…」と声を漏らした。

次に鼻を摘まんでみる。

「ん、むぅ」

苦しそうに顔を歪めた。

毛布を引っ張ってみると、
眉間にしわを寄せ、力を込めて毛布を抱きしめた。



やんわりと、胸が騒ぐ。
このような気持ちを何と呼ぶのかは知らないが


ベッドに腰を下ろし、なまえの顔に掛かった髪をそっと払う。


きっとこいつのアホさが
移ってしまいそうに、なっているのだ。


こんなにも気が緩んでしまうのは、
きっと、その所為だ。




「―なまえ……」

柔らかな頬をゆっくりと撫で、
名前を呼んでみる。

何故そうしようと思ったのかは、自分でも解らないけど、
でもなんだか、そんなことはどうでも良くて。

もう一度呼んでみると、

「ん……えへへっ」

なまえがにっこりと、微笑んだ。


その笑顔は、やっぱりアホ面で、



何故だろう。
胸が高鳴って、
自然と頬が、緩んだ。


机に置いてある本を閉じ、
そろそろ寝よう、
そう思った。



ランプの炎を消し、音を立てないように椅子を戻す。


ちらりとなまえを見る。
相変わらず気持ちよさそうに寝息を立てている。






寝床を奪われてしまった。どうしようか。
こいつを下に落としてしまおうか。






……そう思ったけど、こんなにも手本の様なアホな寝顔を崩すのはもったいないから、

(仕方ないけど)

そのまま寝かしておいてやろう。



疎遠行為実行中





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起こさないように毛布を奪うことに
悪戦苦闘すればいいよ!!

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