MAGIC
□疎遠行為
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寄り添うなんて、弱者による愚行だ。
愚か故に一人では何もできない。
滑稽な行為がお似合だ。
僕には疎遠な行為。
「―そう思わないかい?」
「んえ?」
自室にある簡素な机に本を広げ、椅子に腰かけていたリドルがふとなまえに話しかけた。
空は厚い雲で覆われているため、窓から差し込む月明かりはなく、明かりと言えば机にあるランプの炎だけが頼りである。
家具や物が少なく、殺風景な孤児院の部屋は影となるモノが少ないため
ほぼ均等に明かりが行き渡る。
机に広がる本は闇の魔術に関する本で、今人様のベッドに腰掛けているなまえには余り深くは馴染みの無いものだろう。
その、人様のベッドに座るなまえにちらりと顔を向けてみると、
(人様の)毛布を抱きしめ欠伸をしていた。
……人様の。
問いかけたリドルの口角が、
微かにヒクついた。
なまえはぼんやりと目を擦り、ウトウトしながら
「あー…」とか「うー…」などと
よくわからない声を漏らし、
仕舞いにはコテン、と横に倒れてしまった。
(――そうか、こいつは馬鹿だった。)
「……君は自分のベッドの場所さえ解らなくなるほど馬鹿になのかい?」
手に持っていたペンを机に置く。
「なまえの部屋は、隣だろう?」
呆れた声で言って見せるけど
予想通り返事はなく、
代わりに寝息が聞こえてきた。
(“予想通り”、ねぇ…)
この馬鹿の行為が読めるようになってしまっている、なんて
なんだか終わってる気がした。
(……堪忍してしまう自分が居ることも、また然り。)
一瞥をくれてやるのさえ面倒な気がして、代わりにため息が出た。
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