MAGIC
□雨のち雷
1ページ/6ページ
「なまえ、話があるんだ」
キッチンからお茶の入ったコップを運ぼうとしていたら、背後からリドルに話しかけられた。
「ん?何?」
できるだけ普段のように聞きかえすけど、実を言うと動揺していた。
…リドルのあんな声、聞いたことが無い。
―とても、真剣で、どこか、悲しそうな…
そういえば、今日はリドルが家に来た日と同じ日付だ。
…ひやり、いやな汗が背中を伝う。
振り返って見上げてみると、リドルは笑っていた。…笑っていた、けど。
どこか憂いに沈んだようにも見える。
「なまえ、僕はね、」
いやだ、聞きたくない。
「―帰らなくちゃ、いけないみたい。」
「―っ…!」
いやだ、その先を、私は聞きたくない。
「―二度と、会えなくなるんだ。」
ヒグラシの声が、木魂する。
私は何もいえないまま、ただ突っ立っていた。