捧げ物
□また会える日を…
1ページ/3ページ
「まさか、あんな所で千鶴に会うとはな…。」
御陵衛士の屯所に戻った斎藤は一人呟く。
『今日は送り盆だから、貴方達も先祖を見送ってらっしゃい。』
伊東さんにそう言われ、もらえた外出許可。
平助と共に、見回りも兼ねて市中に出た俺を待っていたのは、浴衣姿の千鶴だった。
「月日が経つのは早いな、あれほどまでに成長していたとは…。」
女物の浴衣を着た千鶴をとても綺麗だと思った。
それと同時に少女から、大人の女性になろうとしているのだと、改めて実感した。
(御陵衛士にも、新選組隊士にも見つからずに済んだのは幸いだったな。見つかっていれば、俺も千鶴も微妙な立場に立たされていただろう…。)
そう、御陵衛士と新選組は交流が禁止されている。
見つかれば、それなりの罰が下されていただろう。
(だが、何故俺はあいつを送ると言った…?普段の男装姿ではないとはいえ、見るものが見ればすぐに千鶴だとわかってしまうのに…。)
何故、千鶴と一緒にいたいと思ったのか…
そして、浴衣姿の千鶴を見て胸が高鳴ったのは何故か…
考えていても、わからない
それどころか、頭に浴衣姿の千鶴が思い浮かぶだけで、また胸が高鳴る。
(何故、胸の高鳴りが落ち着かないのだ…?俺は病にでもかかってしまったのか…。)
「…石田散薬を服用すれば治るはず。」
そう自分に言い聞かせて、斎藤は石田散薬を服用した。