捧げ物

□また会える日を…
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「まさか、あんな所で千鶴に会うとはな…。」


御陵衛士の屯所に戻った斎藤は一人呟く。


『今日は送り盆だから、貴方達も先祖を見送ってらっしゃい。』


伊東さんにそう言われ、もらえた外出許可。
平助と共に、見回りも兼ねて市中に出た俺を待っていたのは、浴衣姿の千鶴だった。


「月日が経つのは早いな、あれほどまでに成長していたとは…。」


女物の浴衣を着た千鶴をとても綺麗だと思った。
それと同時に少女から、大人の女性になろうとしているのだと、改めて実感した。


(御陵衛士にも、新選組隊士にも見つからずに済んだのは幸いだったな。見つかっていれば、俺も千鶴も微妙な立場に立たされていただろう…。)


そう、御陵衛士と新選組は交流が禁止されている。


見つかれば、それなりの罰が下されていただろう。


(だが、何故俺はあいつを送ると言った…?普段の男装姿ではないとはいえ、見るものが見ればすぐに千鶴だとわかってしまうのに…。)


何故、千鶴と一緒にいたいと思ったのか…
そして、浴衣姿の千鶴を見て胸が高鳴ったのは何故か…


考えていても、わからない
それどころか、頭に浴衣姿の千鶴が思い浮かぶだけで、また胸が高鳴る。


(何故、胸の高鳴りが落ち着かないのだ…?俺は病にでもかかってしまったのか…。)


「…石田散薬を服用すれば治るはず。」


そう自分に言い聞かせて、斎藤は石田散薬を服用した。
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