捧げ物
□誓い
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沖田と千鶴が、雪村の故郷で暮らすようになってから半年余り。
雪が解け、桜が舞う麗らかな春の日のこと――――
明治2年5月
私達以外に住む者のないこの場所でも、ある程度の情報は入ってくる。良い情報も悪い情報も…
今回入ってきた情報は後者だった――――
「土方さん、近藤さんの所に逝っちゃったんだ…。」
縁側で1人呟く沖田。
この地に稀に来る商人が教えてくれた。
『戦争は終わった、薩長の勝ちさ。旧幕府軍の幹部は殆んどが投降したらしいが、元新選組の土方は戦死したらしい。』
と話してくれた。
「最後まで新選組を護るんじゃなかったんですか?土方さん。泣く子も黙る鬼副長が聞いて呆れますよ。」
皮肉たっぷりに言ってみるが、その言葉には哀愁を帯びていた。
これが、屯所にいた頃なら『なんだとぉ!』だの『うるせぇ!』だのと、怒号が響き渡るだろうが、もうここは屯所ではないし、沖田は新選組とは別行動を取ったのだ。
「戦が終わって生きてたら、また、からかってあげようと思っていたのに…。」
もう、からかえないじゃないですか
沖田が放った言葉は青い空に消えた。