捧げ物
□大事な思い出
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それは、新選組を抜けてから半年程経ったある日
雪村の故郷で初めて過ごす、穏やかな春の日の出来事――――
「平助君。」
千鶴は、縁側で日向ぼっこをしている藤堂に声を掛ける。
「あ、千鶴。どうした?」
向けられるのは太陽のような、それでいて優しい笑顔。
「お菓子作ったの。だから、お茶にしない?」
「マジ!?じゃあ、ここで食おうぜ!」
「じゃあ、今持ってくるね。」
千鶴は勝手場に向かおうとするが…
「ところで、お菓子って…何作ったの?」
藤堂は素朴な疑問をぶつける
「それは、見てからのお楽しみだよ。」
***
「お待たせ、平助君。」
「これって…。」
目の前に現れたお菓子は…
「作ったお菓子って、牡丹餅だったんだ。」
「うん、もうすぐお彼岸だから、久しぶりに作ってみようと思ってね。」
「そっか…。」
そう言って、平助君は牡丹餅に手を伸ばし、それを口に運んだ。