捧げ物
□なかなか聞けない本音
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世に言う【三条制札事件】
幕府の制札を守りきった原田さんは、会津藩から報奨金をもらい、島原で宴会が催された。
私も連れてきてもらったのだけど…
「「千鶴(ちゃん)、楽しんでるか?」」
永倉さんや平助君が問い掛けてくる。
既にお酒が回っているのだろう、頬が少し赤い。
「はい、楽しんでますよ。」
にっこりと笑顔を向けて答える。
「その割に、酒は進んでねぇんだな。」
私の膳に置かれた盃を覗きこみながら、永倉さんが言う。
「私、お酒を飲んだことがないので、お料理だけ頂いているんです。」
「そうなのか?この機会に少し飲んでみたらどうだ?」
「え?で、でも…。」
永倉さんの言葉に焦る私に原田さんが助け船を出す。
「新八、千鶴が困ってるだろうが。千鶴、無理に飲む必要はねえぜ?」
「なんだよ左之!せっかくの俺の好意を無駄にすんなって!」
「(これは、きっと私が飲まなきゃ落ち着かないよね…。)」
「原田さん、私、少し飲んでみますね。」
「大丈夫か?無理しなくていいんだぜ?」
「大丈夫です、いただきます。」