...inaire book...
□初恋
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「佐久間、ほら、ここ怪我してるぞ。絆創膏張ってやろう」
「ん?ああ、さんきゅ」
…練習からずっといちゃついてる佐久間さんと源田先輩。
「?成神、どうした?」
源田先輩が俺を見て訪ねてくる。
「いっいえ!!なんでもないっす!!」
俺は慌ててそう言って後ろむく。
「…そうか?」
源田先輩は少し眉を顰めながら佐久間さんのほっぺたに絆創膏を張る。
佐久間さんがさんきゅって優しく源田先輩にお礼を言う。
それがたまらなく悔しい。
自分があの立場に居られない事が。
でも、源田先輩が幸せならそれでいい。と最近思ってたけど−…
思ってたけど−…
俺は源田先輩の事が好き。始めは憧れだった。部活見学に来たとき、力強いシュートを一生懸命に止める源田先輩を見てサッカー部に入ろうと決意した。
だけどその憧れがだんだん好意の方になって。「好き」って言う気持ちになった。
けど、源田先輩の隣になることはない。
源田先輩は同級生の佐久間さんが好き。しかもずっと片思い。
前、俺に相談してきた。俺はショックで先輩にアドバイスもできなかった。
源田先輩に「好き」って伝える事もできなかった。
伝える前に俺の恋は終わった
。
だったら、先輩を応援しようと思ったけど−…
だけど−…
「成神…?」
源田先輩が俺の方を見てビックリしている。
俺は泣いていた。
拭っても拭っても止まらない。何とか笑おうと思っても顔が言う事聞かない。
しっかりしろ、応援してやるんじゃなかったのか。そういい聞かせても聞かない。
そうするうちに俺の状況に気づき他のメンバーも集まってきた。
「…鬼道、成神が足樋ねって、痛いらしい。保健室連れて行ってくる。」
「ああ」
そう源田先輩は鬼道先輩に言って
「ひゃぁ!!」
俺をお姫様抱っこした。
そのまま俺は保健室へと連れて行かれた。
保健室はあいにく先生がいなかった。
俺はベッドの上に下ろされた。隣に先輩が座る。
一つ一つの仕草が優しくて。でもこのうちが最後何だろうなって思うと寂しくなった。
「…成神」
優しく俺の名前を呼ぶ声。何時もの指示声ではない。特別に扱ってくれるような優しい声。
「え…はい」
俺も返事をする。
「…どうしたんだ。急に泣いて」
源田先輩は俯きそう呟く。
「…い、いえ、単なるホームシックすよっ いやぁー最近すね、母さん恋しくて…」
「…嘘つくな」
静かに怒る源田先輩。初めてこんな姿見て少しビクッとなってしまう。
「…本当に何でもないっすから…」
俺は俯く。
すると急に暖かいものが俺を包み込んだ。
「…気になるだろ。」
ぎゅっと抱きしめてきた先輩はそう呟く。
「…やめて下さいよ先輩。…俺…俺…」
源田先輩がわ、悪いと言い少し離れる。
「…そんなに抱きしめると期待しちゃうじゃないっすかぁあ…」
流れ落ちる大粒の雫を無視して先輩に言う。
「…俺は佐久間さんには適わないと思った…。だって…俺…」
そう言った途端に唇から熱が伝わる
−初めての恋もキスも涙の味がした−