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□恋色病棟
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「何だ石田は休みか?珍しいな」
担任が目を丸くする。
雨竜が体調不良で休むことなど滅多にないからだ。
「……………」
しまった、という顔をする一護。
彼こそが雨竜を体調不良にさせた張本人なのである。
「(……くそっ、回復したら絶対に殴ってやる…!)」
止まらない咳に苛立ちを露にしながら、雨竜は枕を軽く殴った。
なぜ雨竜が風邪を引いたかというと。
昨夜盛ってしまった一護があれこれやらかしたからである。
経口感染といった所であろうか、直接口腔内の粘膜にウイルスが入り込んだため一発だった。
帰宅した頃にはフラフラな状態で、何とか這ってベッドまで移動したほどである。
「僕は君の薬箱じゃないんだよ」
不機嫌極まりない声音で訴える雨竜。
受話器の向こうからは情けないほど弱った声で反省する彼。
「放っておいたら死ぬかもね」
冗談で言ったつもりだった。
直後何か硬いものに当たる携帯の音と階段を早足で降りる音。
「───単純」
半ば呆れたようにため息を吐き、電源ボタンを押す雨竜。
しかし、その表情はどこか柔らかかった。
「石田!!」
玄関から聞こえる切羽詰まった一護の声。
本当に単純な奴だと雨竜は声を噛み殺しながら笑う。
「お前死ぬかもって…だから、俺、頭真っ白になっちまって…」
いっぱいいっぱいになっている一護の表情があまりにも真剣だったため、雨竜はついに吹き出した。
「な、何笑ってるんだよ!」
「いや、君が単純すぎてつい…っふふ」
散々笑われた一護は不服そうに眉間に皺を寄せる。
「……本気で心配したんだぜ?」
「ごめんごめん、でも風邪引いたのは事実だから」
誰のおかげだっけ?
横目で一護を見れば視線が泳いでいる。
「あー…それは、あの、その…」
「とにかく熱が下がるまで帰らせないからな、責任取れ」
ふい、とそっぽを向く雨竜は耳まで真っ赤。
内心可愛いなと呟き、一護は快諾した。