Short

□恋色病棟
1ページ/4ページ


『風邪引いた しんどい』


そのメールが届いたのが午前1時。
熟睡してる所を着信音で無理やり叩き起こされたような物で、僕の機嫌はかなり悪かった。

素っ気ない返信を送った直後。
1分も経たないうちにまた返信。


『来てくんねえ?』


……高3になった奴が何言ってるんだ。
そう怒鳴り付けてやりたかったけど相手は病人。
1人でなんとか出来ないぐらい症状が酷いのかと半信半疑なまま、黒崎の家へと向かった。

途中で寄ったコンビニでスポーツドリンクとヨーグルトと水を買って、インターホンを鳴らす。


しばらくして足音が聞こえてきて、チェーンキーを外す音。


「お、悪ぃなこんな夜遅くに」


…随分元気そうじゃないか黒崎

内心ヨレヨレな黒崎を予想していた僕は、あまりにも喋り倒す彼にムカついた。


「上がってくれ」


一応熱はあるらしい。
額に解熱シートを貼っていた。


「熱は?」

「んー、38度5分」


こいつ、微熱程度で僕を呼んだのか…!

今すぐにでも彼の頭を射抜いてやりたい衝動に駆られた。
僕の睡眠時間を返せ。


「冗談じゃない、帰るぞ僕は」

「おいおい弱ってる奴を見捨てんのかよ」


踵を返した背中にぶつけられる弱々しい声。
同時にシャツの袖を引っ張られ


「もう少しいろよ…」


なんて言われたら母性本能が邪魔をして帰るに帰れなくなってしまった。



「………おい黒崎」

「あ?」

「どういうことか説明してくれ」


取り敢えず水分補給はさせた。
腹ごしらえもさせた。
水を冷蔵庫にしまおうとしたら背後から抱きつかれた。
そのまま担がれてベッドに連行
今に至る。


「温まると熱下がるだろ?」


──もう嫌な予感しかしない。


「だからさ、雨竜…」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ