二次元

□toi et moi
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アカイトが倒れた。
突然の事で俺はどうしていいか分からなかった。
「アカイト!!…アカイト!!しっかりしてっ!ねぇ、アカイト!!」
倒れたアカイトは意識が無いらしく俺の声に全く反応しない。
「あ゛あ゛ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
代わりに言葉ならない絶叫が彼の口から溢れた。
「アカイトっ!!」
床の上で君が悶絶する。
「…カイトっ、アカイトっ。どうかしたのか?」
俺の声とアカイトの絶叫が聞こえたのかマスター慌てた様子で俺達の所にやって来た。
「…っ。マスター、アカイトがっ!!」
俺の言葉にマスターがアカイトを見る。
一瞬マスターが険しい顔を見せたが直ぐに何時もの表情に戻って
「…アカイトは大丈夫だ。だから心配するな?」
そう言って俺の頭を撫でてくれた。
「……あぁ、俺だ。悪いが今すぐ来れるか?ウチの赤いのが倒れた。………は?原因?ソレを調べるのがお前の仕事だろ?兎に角今すぐ来てくれ。………今?意識は無いでも……あぁ、そんな感じ」
マスターがケータイで何処かに連絡して話している。
誰と話してるんだろうと思っていたら、
「…今、知り合いのVOCALOIDドクターに連絡した。直ぐ来るらしい」
マスターがそう俺に教えてくれた。
VOCALOIDドクターって言うのは言葉通り、VOCALOID専門の医師だって前にマスターが教えてくれた。
アカイトはやっぱり意識は無いけど苦しそうで、俺が変わってあげられたらいいのに、何も出来ない自分が悔しい。
マスターが連絡してから数分でその人は来てアカイトを連れてマスターと一緒に行ってしまった。
そして俺はマスターから留守番を頼まれた。
本当はついて行きたかったけど…。
家で一人で過ごすのは凄く久しぶりでとても寂しかった。
アカイトが来てから何時もずっと一緒だったから…。
心配でしょうがなかった。
早く帰って来てほしい。
アカイトと何時もの様に過ごしたかった。
色々考えてる内にいつの間にか寝てしまったらしく起きたら朝になっていた。
マスターは昨日のうちに帰ってきたらしくてアカイトは?っと聞くとまだ病院っと返ってきた。
やっぱりアカイトの事が気になった。
口には出せなかったけど、俺の気持ちを察してくれたのか(ひょとしたら顔に出てたかも知れない)何を聞いても驚くなよ?っと前置きしてからマスターはちゃんと俺にアカイトの事を教えてくれた。
アカイトがウイルスに感染した事。
ソレがとても厄介なモノだという事。
しかも随分前から感染していたらしい事。
何時までか分からないが暫く入院しなければならない事。
そしてそのウイルスをを完全に消し去るワクチンが存在していない事。
目の前が真っ白になった。
アカイトが、居なくなる?
そんなの嫌だ。
随分前から感染していたなら何でアカイトが倒れるまで気付け無かった?
良く考えればその予兆は有ったはずなのに。
何時も笑って大丈夫だって言う君の言葉を俺が素直に信じてたから?
確かに弱いウイルスなら俺達に組み込まれている免疫プログラムが働いて壊してくれる。
でもそれは決して万能では無い。
マスターの話によればアカイトの免疫プログラムはウイルスに完全に破壊されてしまっているらしい。
その為、普通なら免疫プログラムで破壊出来る様な弱いウイルスにまで感染していたらしい。
ひょっとしてアカイトは俺を心配させない為に無理をしていた?
アカイトが倒れたのは俺のせい?
俺がアカイトを…。
「カイト」
マスターの声に俺は顔を上げる。
「…自分のせいだとか思うなよ?お前は何も悪くない」
俺の心を読んだかの様なマスターの台詞。
「…マスター」
「お前より非が有るのは俺だよ。お前らのマスターなのに、彼奴の変化に気付けなかった。ごめんな」
「…マスター、謝らないで下さい。俺、マスターが俺達のマスターで本当に良かったと思ってます。きっとアカイトだって……」
俺の台詞にマスターは少し困った様な笑みを浮かべ微笑んだ。
「お前みたいなVOCALOIDを持った俺は幸せ者だな。会えるか分からないけどアカイトの所行くか?」
俺だってそんな風に言って貰えて光栄ですよ?マスター。
マスターの問掛けに俺は頷く。
やっぱりアカイトの事は心配だった。
ずっと一緒だった俺の片割れ。
ソレが側に居ないのは凄く心細かったし何かが欠けてるみたいな感じがした。
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