【 Goku × Chichi 】Short ss

□砂時計
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セルゲーム前夜・・・





チチは一日一度は使っている砂時計



それはチチの母親の形見であった







チチは大事に使っていたがある日突然・・・




パリー−ンッッ!!




とガラスの割れた音がリビングに響き渡った




チチは悟空との話を中断して


「見てくるから待っててけれな?」


「あぁ・・・」


と短い会話をしてチチは椅子から立ち上がり
キッチンに向かった




だが、キッチンの床を見たチチは硬直していた




悟空はチチの顔色が変わったことに気づき
立ち上がり、チチの目線を辿ると
そこには砂時計が割れ、砂が飛び散っていた





悟空はその砂時計を大切に使っていることを知っていた





だからこそ、悟空はなんて話しかけていいか
分からなかったが、チチが話し出した


「悟空さ・・・おらは大丈夫だからあっちに行っててけれ・・・」


そう言ってチチは作った笑顔を見せると
ガラスの破片を拾った




悟空はチチの後ろ姿を黙々と見ていると
チチの肩がわずかに震えていた




悟空はチチに気づかれないように近づき
後ろからそっと抱きしめた


「・・・っ・・どうしただ・・・悟空さ?」


と悟空の方に振り向かずに言った




悟空は黙りながらチチを強く抱きしめた



すると、チチが


「・・ぅ・・・悟空さ・・・どうしただ・・・おらは平気だっていったべ?」


と涙声になりそうな声を必死に抑えながら言った



「チチ・・・何で一人で全部抱え込むんだ?・・・そんなにオラって頼りねぇか?」


と悟空は低めの声で言った



「・・・何もないから悟空さに言わねぇだけだ・・・」


とチチはガラスの破片を床に置きながら言った



すると悟空はチチの腕を引っ張り立ち上がらせ
自分のほうへ向かせた


「じゃあ、何で泣くんだよ・・・」


とチチの涙を拭きながら言うと
チチはさっきよりも大粒の涙を流し、悟空に抱きついた



「・・・ぅ・・だって、・・・砂時計が壊れただよ・・・それにセルゲームってのは・・・明日だ・・・もしかしたら・・・って・・・」


チチは涙声になりながらも必死に言った



悟空はチチを抱きしめ返し


「オラは死なねぇ・・・砂時計みたいに壊れたりしねぇよ・・・」


とささやくように言った





それはまるで、自分に言い聞かせているように・・・




だが、チチは疑うこともなく


「・・・わかってるだ・・・悟空さは約束を破るような男じゃねぇ・・・おらはそう信じてるだ・・・」


とチチは悟空の首に顔を埋めた




悟空はチチの髪を梳きながら


「あぁ・・・オラは約束は破らねぇ・・・」


と言い、チチの体を離し、優しく口付けた






それから、悟空とチチは一夜を共にした







そして、次の日の夕方・・・





セルゲームを終えた、悟空と悟飯が帰ってくる予定であった





だが・・・




「お母さん・・・ごめんなさい・・・お父さんは・・・」



セルと一緒に自爆に巻き込まれて・・・死にました・・・




と悟飯は悲しそうに言った




「えっ・・・」


とチチは動揺を隠し切れずに目を左右に揺らした





すると、悟空の言葉が鮮明によみがえってきた


『オラは死なねぇ・・・砂時計みたいに壊れたりしねぇよ・・・』


『オラは約束は破らねぇ・・・』


そう言っていた悟空をチチは思い出すと
泣き崩れた



悟飯はチチの背中を擦りながら


「でも、お母さんに伝えて欲しいって言われたことがあります・・・」


すまねぇ・・・勝手なことばっかして・・・と伝えて欲しいって



と言うと悟飯は嬉しそうに微笑み


「お父さんは最後までお母さんのこと考えていてくれたんです・・・優しく笑いながら・・・」


そう言うと悟飯はチチを一人にしようと
牛魔王を連れ出した



チチは涙を拭きながら


「死なねぇって言ったくせに・・・砂時計のみたいにはなんねぇって言ったくせに・・・」


そういいながらチチは床に寝転がって
涙を流した



だが、チチの考えていたことは悟飯の言葉だった


『すまねぇ・・・勝手なことばっかして・・・』


悟飯の声は悟空によく似ていて
チチには悟空が話しているように聞こえていた



チチは涙を拭き、座ると


「ありがとう・・・悟空さ・・・おらのこと考えててくれてただな・・・」


そう言うとチチは涙の後を拭き
立ち上がると優しく笑った





そして一週間後にカプセルコーポレーションへ行き
砂時計を直してもらった




ガラスをはめ込み砂を入れるだけの作業で終わり
時間は一時間もかからなかった





そして、チチは母の形見として・・・



悟空の形見として・・・





砂時計を大切にした








・・・次こそは壊れないように・・・








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