【 Goku × Chichi 】Short ss

□嫉妬
1ページ/1ページ








悟空は修行の成果を短時間で引き出すことができたため、いつもよりも早めに帰宅する



そして家の前にたどり着くと――。

扉を勢いよく開け放ち……。



「チチ〜、今けぇったぞ〜!」




悟空は大声で自分の帰宅を知らせる


だが…。

チチの暖かく優しい出迎えが、ない…。



――と

リビングのほうから高らかに笑うチチの声が響いてくる



それと同時に、男の話し声も聞こえてくる

悟空は少し表情を歪めたが、リビングの扉をゆっくり開ける




「チチ〜、誰かいるんか〜?」




そう声をかけてリビングに入ると―。

悟空の聴覚は外れてはいなくて、男性が一人



だが、自分の声に気づいたチチがテーブルイスから立ち上がり、笑顔を向ける


そして――。



「お帰り、今日は早いだな!ちょうどお客様が来てたんだべ!」



そういってチチは男のほうに笑顔を向ける

だが、悟空はそんなチチの姿も嫌気が差して―。


自分のものだと―。

そう見せ付けるかのように―。



男に微笑むチチの後姿を抱きしめる




「そうだったんかぁ、オラ出迎えがねぇから、どうしちまったんかなぁって思ったぞ?」


「悟空さっ!」




悟空が最後まで言うと、ほぼ同時に―。

顔を真っ赤に染めて、自分の腕を払いのける



悟空は小首を傾げるが、チチは睨みを利かせいう




「悟空さ!人様の前で何するんだべ!?」


「何って…ただ抱きしめただけじゃねぇか…?足りねぇか?」


「そういうことを聞いたんじゃねぇべ!人様の前で抱きしめたりすんのはダメだべ!」




チチは頬を真っ赤に染めながら悟空を怒鳴りつける


だが、悟空は―。

だったら何聞いたんだ?


そう呑気に聞いてくる



そんなやり取りを聞いている男は―。

クスクスと小さく笑う


チチは少し頬を染めながら、男を見る

だが、男はチチに微笑みながら―。



「笑ったりしてごめん。でも、旦那さんとはうまくやってるみたいだな」


「、ん…喧嘩もすっけど、うまく生活さしてるべ」



チチは照れくさそうに男を見ていう

だが、悟空は自分以外の人に微笑みかけることが…気に入らない。



知り合いなら未だしも、自分の知らない男。


いやになるのも無理はない。



――と

チチがこちらを振り向く



先ほどの喧嘩はなかったかのように微笑みかけて。




「悟空さ、紹介するだな…こちらのお客様はおらの幼馴染の祥吾っていうだよ」



そう自慢げに紹介する


悟空はただ、へぇ、としか返さない



だが、男…祥吾はイスから立ち上がり…。




「申し遅れました。祥吾です。チチとは昔から仲良くさせていただいてます」



そう、自己紹介をすると、軽く挨拶してくる


だが、悟空は気に入らない。

チチと呼び捨てにする仕草
昔から…つまりは自分の知らないチチを見ている

それが嫌でたまらない



だが、悟空は負け時と―。




「オラはチチの夫の孫悟空だ!」




そういって悟空はチチの背を抱きしめて少し体重をかける

だが、チチは―。
すぐに自分の腕を振り払ってしまう


そして睨みを利かせるが、人前だからなのか―。

怒鳴ることはしなかった



そのまま、ため息をつくと…。

再び祥吾の方へ向いてしまう



「もう、座っていいだよ」



そうチチがいうと祥吾は悟空へ微笑みかけ、元いたイスに座る


チチもテーブルを挟んだイスへと座る



悟空の心の中には―。

黒く渦巻く感情が支配し始める



だが、必死にその感情を押さえ込む




――と

チチは自分の方へ振り返って―。




「悟空さ、おらの隣、座るだか?」



そう声をかけられると悟空は無言でその隣のイスへ腰掛ける

だが、チチとは少し距離を置いて、席に座る



―が

悟空にしては珍しく。


険しい表情で腕と足を組み、二人の会話に耳を済ませる




普段なら、会話に割って話してきてもおかしくない


だが、今回に限っては一切、それがない

チチはおとなしい悟空を不思議に思ったが、祥吾との会話に心が弾む



「あの時、おめぇさったらおっ父の宝、壊しちまって……」


「俺だけのせいじゃないだろ〜?チチだって一緒に遊んでたんだから…」




そんな自分の知らないところでの話を繰り返す


だが、悟空の漆黒の感情は―。
今にも爆発しそうだった



そして腹を立てている悟空は、険しい顔つきで祥吾に言う




「なぁ、そんなに昔の話が楽しいんか…?」



そう声を発する自分の声も低く、感情が現れている声


だが、そんなことをよそに…。

祥吾は小さく微笑み、一言。



「楽しいよ、悟空さんの知らないチチを知っていられるから……」




祥吾は余裕の意味で言う


だが…。

それに悟空も嫉妬心と言う狂った心が爆発する



悟空は珍しく舌打ちを打つと、イスを倒して立ち上がる


そして険しい表情で睨み付けて、去っていこうとする

だが…。


様子のおかしい悟空の方に歩み寄り、腕を掴んで―。



「悟空さ、どこさいくんだべ!?」



チチもさすがにずっと悟空を無視していて、あせる


だが、悟空は焦るチチの心配そうな表情に―。

キッ、と強い睨みを利かせる



――と


チチの掴んでいた悟空の腕への力が、すっ、と弱くなる




悟空はその隙にチチの元から少しはなれて―。


瞬間移動の体制をとると、シュンッと消え去ってしまった




チチは悲しい気持ち、苦しい気持ち、切ない気持ち、

複雑に絡み合う気持ちが一気に押し寄せてくる



祥吾はそんな弱弱しいチチを見るのは初めてで――。


自分の考えなしの発言に申し訳なく思う



そして、チチの横顔を見つめながら―。



「チチ、旦那さん怒らせちゃってごめん…俺も言いすぎた……旦那さんにも謝っといて」



その言葉にチチも曖昧な返事で、うん、と返すだけ。


だが、祥吾はチチの肩に手を置いて、じゃあな、と一言。

そしてリビングから去っていった



チチは去っていく祥吾の背を見つめ、出て行くのを確認すると―。


堪えていたものが一気にあふれ出す

チチはその場に座り込んで、声を殺し、大粒の涙で次から次へと頬をぬらしていく



―ふと

人の気配を感じ、後ろへと振り返る



そこにいたのは、先ほど怒っていた悟空の姿で―。


チチは悟空の姿を見ると、すくっ、と立ち上がり。

その広い胸へと飛び込む


支えてくれた悟空の胸に顔を埋めると、悟空の名前を連呼。




「悟空さ…悟空さッ、」



連呼していると悟空の声が耳に届く


それも先ほどのような怒った声ではなく、静かな声で――。




「なぁ、チチはあいつのことが好きなんか?」


「えっ・・・?」



チチは意外な質問に驚きの声を上げる


だが悟空はチチを抱きしめたまま、問いかける



「何であいつの前でベタベタすんのダメなんだ?チチはオラの嫁だろ?」


「そうだけんど、人様の前ではおらが恥ずかしいんだべ…」


「そんだけか?」


「、ん」




チチは恥ずかしながらに悟空の胸に頭を預けながら頷く


だが悟空はチチの体を開放し…。

チチの顎を持ち上げ、自分の方へ向かせる



丁度、瞳が重なり合う


悟空は頬を染めて照れているチチに問いかける



「じゃあ、おめぇが好きなんはオラだけか?」


「あたりめぇだべ?悟空さ以外に最高な旦那様なんていねぇだよ…悟空さもおらだけだか?」




そういい終わった途端、悟空はチチの唇を奪う


それは…。

チチ以外にいないと言っているかのように…。



深くも優しい口付けを何度も繰り替えす


一方、チチも悟空の山吹色の胴着を掴み、悟空を求める




――と…。

悟空は口付けながらその場にチチを押し倒す


だが、衝撃を与えぬよう、そっと―。



そんな気遣う悟空にチチは愛しさが込み上げる

そして唇を離したとき…。



「大好きだべ、悟空さ…」



チチは自らの唇で悟空に口付ける

悟空は少し驚いたが、それを受け入れ…。


そして唇を離すと。


悟空は自分の山吹色の胴着とアンダーシャツを脱ぎ捨てる


チチは驚きに声を上げ、その後、何をされるか予想ができる




「……悟空さ?」




そう彼の名前を呼ぶと、悟空は口付ける


すぐに唇を離すと。

行為を続行させようと、チチのボタンを外そうとするが…。



悟空はチチを見て苦笑い




「できそうにねぇな、悟飯が帰ってきちまう…」



そういったとほぼ同時に、玄関の扉が開かれる音が聞こえる


チチは頬を真っ赤にすると…。

悟空はチチのボタンを閉めなおして、自分も立ち上がると、チチの腕を引いて立ち上がらせる



そして小さく笑うと…。




「続きは夜、な」


「…何言ってるんだべか…」




呆れるチチだったが、嫉妬…

妬きもちを妬いてくれた悟空に少し、嬉しくなるのだった





―――――――――――


最終加筆日:2011.7.18

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ