【 Goku × Chichi 】Short ss

□夢
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―――――――――――

―――――………。



暗闇の中……。

一人の影が見える


その影はどんどん、自分へと近づいてくる



そしてその影の正体もわかるほど見える

そこで、自分はその影を見て、そっとつぶやく




「チチ・・・か?」



―――オラ、死んだはず

何でチチがここにいんだ



疑問が浮かんだが、その影がチチだとはっきり見え始める


そして自分も一歩ずつ。

チチへ近寄る。


――、と

チチはある位置でとまる


悟空は未だに心は半信半疑だったが、自然と頬が綻ぶ

そして歩み寄りながら言う



「オラ死んじまって・・・もう会えないかと思ったぞ・・・」



そういうと、チチが手の届く範囲内にくる

そして手を伸ばしたが…。


2人の境には、触れることを許さないかのように…

透明なガラスのようなものが強いられていた



悟空は触れられない悔しさに―。

声を張り上げる



「何でだよ・・・何でチチに触れないんだよ!」



そういうと、悟空はそのガラスを思い切り殴りつける

だが、そのガラスはビクともせず、壊れない


チチは切なそうに微笑みながら悟空に言う




「仕方ないだよ・・・だっておらは生きてて悟空さはこの世には存在しねぇんだもん、境があったっておかしくねぇだ」


「ッ……チチ、すまねぇ…オラが勝手なことばっかしたせいで…」


「しかたねぇだよ、そうしなきゃ今の地球はなかったんだべ?おら感謝しなきゃな」




そういうチチだが、瞳は大きく揺れ悲しそうに笑う


悟空も急激に悲しくなる

だが、無力な自分は―。



「すまねぇ、チチ・・・」



そう謝ることしかできなかった


だが、チチは―。



「大丈夫だべ、悟空さなしでもおらは平気だべ!」



そういって笑っていた

その言葉に少し切なさが生まれる



――もう、オラがいなくてもチチは生きていける



そう言われた気分だった


そして不意に思いついた言葉が――。



「チチ、オラさ、今だったら何でもやってやる、なぁ、何して欲しい?」


「・・・おら、悟空さに約束して欲しいことがあるだ」


「何だ?」


「おらな、悟空さに愛してるって言って欲しいだ」


「そんなんでいいんか?」


「そうだ、だって今まで言われたことなんてないだ・・・だから悟空さに一度でもいいから言って欲しかった」




その言葉に悟空は思い出す


確かに今まで言ったことがなかった

いや―。
照れくさくていえなかった



だが、今なら言える。



「だったら何回だっていってやるさ・・・」



悟空は一息おいて、チチに触れるかのようにそっとガラスに手を置く

そして小さく微笑み言葉を言う




「チチ・・・愛してる・・・今までもこれからも・・・おめぇが一番だ」




そういい終わると同時にチチの瞳からは…。

すーっ、と涙が伝っていた


悟空は何か間違っていたのか、とあせる



だが、チチは、ありがとう、と言い小さく微笑む

そして言葉を続ける



「おらも愛してるだ、大好きだべ」



そういったチチの瞳からは何粒も涙があふれ、零れ落ちていた


悟空は切なそうに笑うチチを見ていると―。



無性に苛立つ

自分が無力で仕方なかったからだ。



耐え切れなくなった悟空の瞳からも

―すーっと涙が伝っていた



そして無力な自分の拳をギュッと握り締めながら言う



「チチの涙、拭いてやれなくてわりぃ・・・」



自分の声は涙声に近かった

だが、頬に伝っていく自分の涙をぬぐう


チチはふっ、と微笑むと――。




「悟空さが泣くなんてらしくねぇだな・・・」


「ホント、情けねぇな・・・」


「そんなことないだ・・・悟空さが一番だ・・・」



そういうチチの瞳は光が宿る


―――と。

透明のガラスが弾けるように消える




「「………えっ…!」」



驚きに2人同時に声を上げる

だが2人は顔を見合わせると同時に自然と体が動く




「……チチ!」


「悟空さ!」




そうお互いの名前を呼び合うと、2人は指を絡め手を握る


そして抱きしめようとしたところで――。



腰あたりを後ろから強い力で引っ張られる


2人はもがくように体を揺らす

だが、お互いは手を握ったまま、離さなかった



「やめろ〜っ!」


「っ、悟空さ!」



2人は辛そうな表情を浮かべると、体が引きちぎれるような思いをして―。

強い力に抵抗する


すると、その力は一瞬…緩む



その隙に2人は腕を引き合って――。


愛しい人の唇へキスを落とす



「愛してる・・・悟空さ」


「あぁ・・・オラもだ・・・」



そういい合うと先ほどよりも強い力で引っ張られ…。


お互いに現実の世界へと引き戻される――。






―――はぁ、はぁ………。



悟空は朦朧とする意識の中、ゆっくりと目を開ける


だが、うまく状況を飲み込めない




そうやっていると、界王の顔が覗く


悟空は現実を飲み込めず、ただ呆然と見つめていると―。




「悟空、お主…パイクーハンの技をまともに食らって3日も眠って居ったんだぞ?」




そういう界王の声が響く

だが、悟空にとってさほど関係はなかった


ただ…。

あの夢が頭の中から離れない




「界王様、死んじまうと…夢って見られねぇんだよな?」




悟空は界王に聞いたことを不意に思い出し、尋ねる


、と界王は小さくうなづき、言葉を続ける




「死んだものには時間がないから、夢は見れないと前にも言っただろぉ?悟空……」


「………だよな」


「何だ?夢でも見たのか?」




そう尋ねられると、悟空は正直に言うかを迷う


だが、自分の口から出たのは…。




「ぃや、ただ聞いてみただけだ」




そう言葉を発した


すると、界王は言う




「…だが、悟空……自分の思いが強ければ、だが…夢を見ることもあるらしいぞ」




そう、一言言い残し…。

界王はその場を後にしていく



――自分の思いが強ければ、



その言葉に悟空は気づかされる


そして小さく微笑み――。




―――オラ、チチに会いてぇって思ってんだな



そう思うと、ベッドに座っていた体制から、足を床につける


そして、チチへの強い思いを胸に残しながら…。

修行に打ち込むのだった






―――――――――――


最終加筆日:2011.7.18

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