【 Goku × Chichi 】Long ss

□キス
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それから意識が覚醒したのは、真夜中の満月が見える夜空



チチは夢から現実へと戻る


そして、一人眠る寝室から勢いよく体を起こして、リビングへと掛けていく




―――けれど、そこは真っ暗闇の中のよう


チチは電気をつけると辺りを見渡して探す




それでも先ほどのことは夢ではなかったのか、悟空の姿もなかった



けれど、昼間に作っておいたご飯は無くなっていて……


チチは帰ってきた息子たちが食べたのだろうと察知する




だが、チチにそんなことは関係なく、その場へと足元から崩れる


すると、流しきったはずの涙が頬を伝っては床へと流れ落ちてくる




チチは弱い自分が大嫌いだったが今回ばかりは強い自分でいられるはずもなく

顔を手で覆って現実の恐ろしさに涙を流す



すると、嫌な事だけが脳裏によぎっていく





今頃、悟空は自分ではない女とベッドで出ているのではないか



もしかしたら今も行為を行っているのではないか



女の名前を呼んで愛してるって囁いているのではないか





それが脳裏へ巡ってきて、胸が熱くなって張り裂けてしまうかのように痛む




けれど、そんな感情に従って泣き叫んでしまえば

きっと息子たちが起きて心配してしまうだろう



そのためにチチはひたすらに声を抑えて涙を流す





それも、鳥のさえずりがなる頃にはチチは一旦、母親へ戻るために泣きそうになるのを抑えて洗面台へと向かう



そして朝のシャワーを浴びると、自分の身支度を全て終えて
着替えているときに不意に鏡が目に入る





すると、そこに移るのは間違いなく自分の姿



けれど、目は真っ赤に腫れていて、顔色は真っ青…


それは酷く泣いていて不安なのだろうと息子たちは思ってしまうだろう




チチはそれを避けるべく、久々に化粧品を取り出すとメイクをしていく




念入りにメイクを済ませると、鏡を見つめる


けれど、目は潤んだままで今にも泣きそうな表情




チチは鏡を見るのをやめて、化粧品をしまうと、キッチンへと入っていく



そして、今ある食材で悟空より少ない料理を手際よく作っていく




何かをしていないと涙が溢れそうで嫌なことばかりを考えてしまうためだった


すると、階段を下りてくる音がキッチンにも響く




チチはキッチンからリビング内を覗くと、眠そうな次男の姿


きっと、兄である悟飯に起こされたものの、眠気は取れないのであろう



チチは料理をしている手を休めると悟天に歩み寄って眠そうな悟天を支える



すると、悟天は悟空にそっくりな大きな欠伸をすると、目をこする


その行動さえにもチチは敏感に反応してしまって胸が痛み出す




けれど、チチはそんな思いを振り払おうとしっかりと母親になり言う




「悟天ちゃん、おはよう、ちゃんと眠れただか?」



「…ん、おはよう…昨日は早く寝たつもりだけどまだ眠いんだ」



「じゃあ、顔洗ってくるだよ…そうすると、目覚めるから…」



「…ん」




悟天は曖昧な返事ながらもチチは悟天の言葉を聞き拾っていく


すると、長男の悟飯が階段から降りてくる




チチは降りてくるであろう悟飯の方を見つめると悟飯はすでに身支度を済ませた姿で降りてくる



そして、チチの目をしっかりと見つめて挨拶



「おはようございます、母さん」



「おはよう、悟天ちゃんが洗面台にいるから寝惚けて眠らないように見てやっててくれるだか」



「はい、それより…母さん、どうして化粧なんかを?どこか出かけるんですか?」




悟飯は不思議に思ったのか尋ねてくる



するとチチは質問に困ったものの、苦笑いをして言う




「…ん、んだ、今日は隣町の奥さんと出かけるんだべ」



「そうなんですか…でも平気なんですか?昨日、泣いてた…みたいですし」



「………あれはもう平気だべ、ちょっと悟空さと喧嘩しただけだかんな…」



「それでだったんですね、じゃあ悟天、見てきますね」



「…ぅん、よろしく頼むだ」




チチは手伝ってくれる悟飯に心底、感謝する


そして、悟空の話に触れなかったことにも感謝した



きっと、そのことをたずねられたらチチは答えに迷ってしまう



それを知っていたから悟飯は自分に尋ねなかったのだろう




すると、チチは小さく微笑んで洗面台へと消えた悟飯に言う



「ありがとう…悟飯ちゃん」



その声は呟きのようで、きっと悟飯には届かないであろう


けれど、チチは満足そうに微笑むとキッチンへと入る






それから、チチは早朝に行うことを全てやり終える



朝食の用意


洗濯物を洗濯機に入れる作業



そして長男を送り出すこと




けれど、今日に限って、悟天だけはどうしてもここにいてもらいたかった




それは、悟天がいなければ自分の時間が来る


となれば、母親の時間はなくなり、自分の時間である以上はきっと感情をコントロールできなくなる




そう思っていたからだった




だが、今日も悟天は朝食を食べ終えると、C・Cへ行くと言い出してきた



チチはもちろん、止めるものの、チチに有無を言わせないかのように玄関から去っていってしまった




チチも玄関からでて悟天を呼び戻そうとすると外へと出る



けれど、悟天はとっくに空の彼方へと消えていた





チチは大きなため息をつくと、玄関へ入っていこうとする




けれど、不意に目に入ったのはターレス


チチは昨日、窓から消えていってしまったとばかり思っていたために驚く




すると、ターレスはチチの元へと歩み寄ってきて言う




「……俺さ、前に死人だっつったろ、それでこの世にいられる期間は一日だけ…その一日ももう過ぎるんだ」



「えっ・・・?もう帰っちまうってことけ」



「まぁな……だから俺からのサービスやるよ…」



「サービス、ってなんだべ?」




チチはターレスを見上げながらたずねる



するとターレスはチチをまっすぐと見つめて一言




「カカロットは今夜中に戻るってよ……」



「……そうだか」



「あぁ、それだけだ…それともう一つ……」



「何だべ?」




チチは悟空のことは何だか気まずくて尋ねることはしなかった



だが、ターレスはもう一言言うものだから、また悟空のことを言われるのでないかと思い、気まずくなる


けれど、ターレスの返事には一応、変に思われたくないため答えた





―――――すると


見上げている自分の顔にターレスの顔が近づく




チチは驚くのも束の間で、自分の唇にターレスの唇が触れる



チチは驚いて目を見開くと、唇を離される


すると、やはりからかっているかのように嘲笑う




チチは段々と今起きたことを理解していくと頬が紅色に染まっていく



そして全てを理解しきると、唇に手を当てて、ターレスを見上げる




「それが俺からの最高のサービス……俺様にキスをもらえたんだ、感謝しろよ」



「…何するだ!急にっ!」



チチはもちろんのこと、唇を拭って怒鳴りつける


すると、ターレスはチチの頭に手を置く




そして不器用ながらに頭を撫でられて、ターレスが口を開く




「……ほら、元気でたじゃねぇか、お前には怒ってる姿のほうが似合ってるぜ」



「…!何だべ!それじゃ、おらがいつも怒ってるって言い方でねぇか!」



「あれ、お前は怒ってることのほうが多いだろ」



「まったく!あれだけ世話して飯だって作ってやっただに……その態度はねぇべ!」




チチは、恩知らず、と呟いて腕を組むとターレスを睨みつける



するとターレスは怖くもないくせに、あぁ怖ぇ、怖ぇ、などと言ってチチをからかい続ける





だが、そんな時間も終わり告げてきて……



ターレスは地上にいるためのエネルギーが切れ始めているのか、うっすらと汗を掻いて、息が荒くなり始める




「ターレスさ、もう時間なんだべ?大丈夫だか」



「……はぁ、はぁ……もう、限界みたいだな……」




そう呟くと、ターレスは空を見上げる



すると、飛び上がろうと、地から足を離し浮かび上がる





けれど、チチは浮かび上がったターレスに言う





「ターレスさ…色々とありがとうだ…楽しかっただよ」



「あぁ……それとカカロット、女なんて抱いてねぇから……」



「……ん、解ってるだよ…ターレスさの態度見てたら解るだ」



「そうかよ……」




そう呟くと、ターレスは空高く舞い上がっていく



その時、地上にいるチチを見つめて思った






――――――カカロットのやつには勿体無い女だな




気にいったぜ、チチ





そう思うものの、自分の感情はただのからかいだと見せかけて空へと消えていったのだ






本当はからかいではなく、本当の気持ちだったというのに


ターレスは何も告げずに、去っていったのだった





次で最終章!!!

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