【 Goku × Chichi 】Short ss

□一筋の光
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龍珠高等学校の裏庭



俺は最後に一発パンチを入れて相手を気絶させる。


「・・・ちっ・・・喧嘩売っといてこの程度かよ・・・暇潰しにもなんねぇ」


俺はコンクリートの上に倒れている数人を目にし、もう一度舌打ちを打つ。



そして、学ランのポケットにある煙草を取り出すとライターを手に取り
深く吸うと、深く吹かす。


すると、ズボンに入れてある携帯のバイブがなった


だが、電話をする気分もなく、携帯をポケットから取り出すと
コンクリートへと投げつける。


それでもバイブはしつこく鳴り響く。


「ちっ・・・」


俺は仕方なく、立ち上がり携帯を手に取ると通話ボタンを押して
煙草を口に当てた


「・・・誰だよ」


明らかに機嫌を損ねている低い声で電話に出た


「カカロットさ、おらだよ、チチ、それより今どこにいるだ」


チチはカカロットの機嫌など関係なく、明るく元気な声で尋ねる



カカロットは煙草を深く吸って肺へ入れると


「チチには関係ないだろ・・・切るぞ」


俺は電源を切ろうとボタンを押そうとした



「待って!カカさ、今どこ?それだけ教えてけろ」


チチは焦るように声を上げてカカロットに尋ねる



カカロットはもう一度、携帯を耳に当てた


「裏庭だ・・・じゃあな」


そういうと、返事も聞かずに電源を切った



その後、壁に背を預けるとその場に座り込んで空を見つめた



カカロットの周りとは違って空は青く澄んでいて太陽の日差しが強かった



その後、視線を自分の周りに移すと血だらけになって気絶している者たちだけが目に入ってきて・・・


青空とは無縁の存在だ



カカロットは無償に苛立ち壁へと肘を打ち込んだ



だが、ものに八つ当たりをするだけでは自分が痛みを伴うだけで
何も変わることはない・・・



そこへ、先ほどまで電話をしていたチチがやってきた


走ってきたのか、髪の毛が靡いていて、少しだけ息を切らしていた



「カカロットさ!急に電話切らなくたっていいべ!?それに煙草も吸うでねぇ!」


チチはカカロットの元へ歩むと、口に当てていた煙草を取り上げた



「ちょっ!返せよ」


カカロットは立ち上がってチチの指に持たれている煙草を取り上げようとしたが
チチは返す気などまったく持ってあるはずもなく・・・


「未成年のくせに吸ってるなんて非常識だべ!それに体に悪いし駄目だ!」


チチは舌を出して「べ〜」と発すると煙草を床に落として靴で踏みつけた


「これで吸えなくなっただな」


チチは笑うと、踏みつけた煙草を手にして、ポケットにある袋を取り出すと
その中へと捨てた



カカロットはチチの行動といい、笑顔といい、対したことでもないのに
何かが癇に障り、苛ついた


そしてチチの腕を引っ張ると壁へと押し付けた


「キャッ」と短い声を発したがそれさえも癇に障り、腕に力が篭った


「・・・カカさ、痛い・・・ッ・・・離してけれ」


チチはギシギシと痛む腕を見ると、片目を閉じた



だが、カカロットはそんなチチを見つめ続ける



「なぁ、何でチチは俺に構うんだ?どうしてほっといてくれないんだ」


真剣な碧色の瞳で訴えた



俺はこのまま一人でいたい

ずっとこのまま一人で・・・


けどチチの存在が邪魔をする


こいつが現れるたびに何かがモヤモヤして晴れない


だったらチチがいなくなれば俺は静かに暮らせる



「・・・なぁ、教えろよ、何で構う?」


カカロットは念を押し、チチに尋ねる



すると、チチは腕の痛みに耐えながら目を開けると真っ直ぐに
カカロットの碧色の瞳を見つめた


「・・・救ってあげたいから・・・」


「・・・・・・救う?」


カカロットはもう一度聞き返す



すると、チチは強い瞳でカカロットを見つめて・・・


「そうだ、おらがそばにいる理由はカカロットを救うためだ!だってこの世界はカカロットさが思っているほどに汚れてなんかねぇ!確かに悪い奴もいるけど、全員が信じられねぇって人なんかじゃねぇ!」


チチは強く言い放つ



カカロットは険しい表情でチチの目を見つめると、さらに険しくし


「・・・・・・違う・・・この世界は汚れきってる・・・誰も信じられるものなんて存在しない」


カカロットは冷たい瞳で冷たい声で否定した



そしてグッと力に手が篭った


「いや・・・ッ・・痛いッ!離して」


そう言ってチチは腕を払いのけようと抵抗した



だが、カカロットは抵抗するチチを見つめる



・・・・・・俺もいてぇよ・・・


おめぇを見てっと心臓が痛くてしかたねぇ・・・



自分からチチがいなくなればいいと思っているのに本当は自分のものにしたくてたまんねぇ



すると、カカロットは力を込めていた手をスッと離してチチの腕を解放する



チチは潤んでいた涙をふき取ると、どうして?と尋ねようと試みた


だが、カカロットはチチに背を向けたまま、口を開いた



「・・・チチ、俺には信じられるような奴なんていない・・・お前もきっと信じられない・・・だから・・・・・・」


もう、俺に構わないでくれ・・・


そう言おうと思っていたのに言葉にならなかった



その言葉を言ってしまえば何かが終わってしまいそうで崩れてしまいそうになった



だが、チチはカカロットの背中を見つめ


「だから・・・もう関わるな・・・って言おうと思ったんだべ?」


チチは呟くようにカカロットに尋ねる


カカロットは驚いた反面、何も言えなかった


「やっぱりな・・・そんなに嫌だって言うならもうおらにはカカさを変えることはできねぇ・・・けどこれだけは覚えて置いて・・・」


チチは一呼吸を置くと、小さく微笑んでカカロットの背中を見つめた


「おらはカカさを信じてる・・・絶対に変わってくれるって・・・大切な人を見つけて幸せになってくれるって・・・・・・本当はおらがカカさの大切な人になりたかったけど、もうおらにはできそうにないだ・・・・・・だからずっと見守ってるだ」


言い終わると、チチは少しの涙が浮かんだ



だが今はダメと思うと話を終わらせようとして涙を必死に抑えながら


「それじゃな・・・カカさ」


そういい残すと、カカロットの横を通り過ぎてその場を去っていこうとした




だが、カカロットに腕を掴まれて壁へ押さえ込まれた



すると、痛さに声を上げる前にカカロットの唇によって塞がれた


チチは驚いて目を見開いたものの拒むことができず
ギュッと固く目を閉じた


そして解放されると抱きしめられて・・・


「カカロ・・・」


「なぁ・・・チチなら信じてみても平気か?」


カカロットはチチの言葉をさえぎりささやくような小さな声で発した



チチは耳元で言われたために聞き取ることができた



そして優しく抱きしめ返してカカロットの体温を感じ


「大丈夫だべ・・・おらを、信じてみてけれ」


カカロットへ返事の変わりにもう一度、チチに口付けた
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