【 Goku × Chichi 】Long ss

□桜舞う木の下で
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チチは真っ白になる思考で走っていると、何故か、桜の木の目の前に来ていた



そして根元に腰を下ろして体を丸めるようにして涙を流した


このとき、チチは涙が一生止まらないのではないかと思うほどに涙が止まらなかった



久しぶりに泣いたからなのか

それとも痛いからなのだろうか

苦しいからなのだろうか



チチは初めて知る感情ばかりでこの思いを知ったことがなかった

そしてこの思いがなんという名前であるのか・・・



苦しくて悲しくて

でも好きって思いが抑えられなくなりそうな感情



どうすればいいの?

私に何をしたらいいって言うの?



そんな思いが体中を駆け巡ぐり、涙となって溢れた



すると、私は目の前から抱きしめられた


チチの視界は涙で歪んで誰かはわからなかった



だが、彼自身の独特の香り

彼の暖かい温もり


それだけでチチは誰であるかなんてすぐにわかってしまった


「先輩・・・今はほっといて」


チチは自分の手の甲で涙を拭きながら涙声で言った



だが、カカロットがそんなもので開放するはずもなく、もっと強い力で抱きしめた



「・・・いやだ」


「お願い、今だけはそっとして置いて・・・」


そう言って、カカロットの腕を解こうとした


だが、力強くてチチの力では到底敵いっこない・・・


「・・・チチ、俺の話聞く気ねぇか?」


「今は何も聞きたくない、触れられたくない、一人でいたいの」


「一人にすることはできねぇよ・・・」


「どうして・・・?」


「・・・あの女のことだけど誤解してる」


「誤解なんてしてない!あの女の子に触れた!事実でしょ!?」



何を言ってるんだろう・・・

先輩は私のものでもないのに馬鹿みたいだよ・・・



「・・・だからあれはこれで終わりにするからって・・・」


「言い訳なんてしないでよ・・・」


チチは抵抗は見せていないものの、言葉では責め続けた



「言い訳かもしんねぇけど、誤解されたままなのは俺が困る」


「・・・・・・・・・」


「チチが籠持ってくるって行った後さ・・・・・・」




――――――――――――――――



――――――・・・・・・・・・・・・・・





カカロットは籠を入れるためのスペースを作っていると、体育館倉庫の扉から一人の女子が入ってきた


カカロットはチチかと思い、作業をしている手を休めると、扉を目の前に行った



だが、チチの姿ではなく、制服を着ている幼さの残る顔の女の子だった



カカロットは上履きの色で後輩だと識別すると


「・・・迷ったのか?」


と小首をかしげ尋ねた



だが、少女は小さく左右に首を振って、頭を下げた



カカロットは少しだけ動揺すると


「ちょっ・・・どうかしたのか?」


「・・・初めて見たときから好きでした、付き合ってください!」


少し自身のなさそうな声だった



カカロットは困ったような表情をすると


「・・・・・・わりぃ、俺、おめぇのこと知らねぇし、好きなやついっから付き合えねぇんだ・・・」


カカロットは何も偽ることもなく、はっきりといった



すると少女は頭を上げると俯きながら


「・・・じゃあ、抱きしめてもらえませんか?」


「・・・・・・へっ!?」


「そうしたら先輩のことは諦めます、だから最後に一度だけ抱きしめてもらえませんか?」


少女は顔を上げて少し頬を染めていった



カカロットは断ろうと思っていたのだが、諦めてくれるんなら、と考え


「・・・一回だけな」


とつぶやくと、自分の方から歩み寄って軽い力で抱きしめた



すると少女も優しく抱きしめ返してきて・・・


カカロットはどのタイミングで解放すればいいのかわからなくなり
考え込んでいるところ、扉の向こうから音が響いた


カカロットは考えることを一端やめて恐る恐る顔を上げると、扉の向こうにはチチの姿があった



その表情はまさに切なそうで悲しそうな表情・・・


カカロットは引きとめようとして声を上げようと思ったが、チチの流れる涙を見た瞬間・・・

声になるはずの声が出なくなった



すると、チチは走り去っていってしまった



カカロットは少女から腕を離すと


「・・・わりぃ、俺行かなきゃなんねぇから!」


そう言って誤ると、倉庫の扉を開けてチチを探した



まずは屋上・・・


その後、一年の教室全て


そして思いついたのが自分とチチが初めて出会った桜の木の下



その場所が脳裏によぎった瞬間にカカロットは久しぶりに全力疾走で桜の木の下へと向かった



すると案の定・・・チチの姿はあった


だが、チチは自分の姿に気づいていないのか声を必死に抑えながら泣いていた



するとカカロットの体中には抱きしめてやりたいという感情が溢れ出して
思うが儘にチチにそっと歩み寄り抱きしめた





・・・・・・そして今に至るのだ・・・




「・・・チチ、わかったか?」


カカロットは一通り、話し終わると、チチの体を離した



「・・・ぅん、わかったよ」


「じゃあ、俺の好きなやつって誰だと思う?」


「私の知らない人でしょ?きっと綺麗な人なんだろうね」


チチは自分の発言で自分自身を傷つけた



だが、その痛みを抑えてでもこの思いを伝えたらきっと、さっきの彼女のように振られてしまう・・・


その思いだけが脳裏によぎって自分の思いは封印しようと思っていた矢先・・・



カカロットは優しい声で


「・・・あぁ、綺麗過ぎる・・・桜が似合う女で俺にとっては最高の女だって思ってる・・・」


「・・・・・・桜が似合いような女性・・・素敵だね」


チチは引きつった笑顔ながらも必死に笑った


「・・・桜の似合うやつって言ったらさお前しかいねぇだろ?チチ・・・お前が俺の好きな女だ」


カカロットは照れることなく、チチの目を見つめていった



そしてそのまま目を閉じると、チチの唇に自分の唇を重ねた


チチは嬉しさに涙を流しながら口付けを受け入れた



そして唇を離すと


「チチ、返事は?」


「キスしておいて何言ってるの?」


「・・・だよな、ははっ・・・」


「でも私は先輩が好きだよ」


「・・・あぁ、なんとなく知ってた」



その言葉にチチは驚き、目を見開くと


「どうして!?私、ブルマにしか言ってないのに!」


「いや・・・だって体育ん時もずっと見られてるし、俺、緊張したんだぞ」


「・・・それでもちゃんとシュート決めてたじゃん」


などと楽しく桜舞う木の下で話し合ったのだ









桜舞う木の下で私たちの物語は始まった


私には全てが新鮮で何もかもが変わった




新しい恋を知って悲しくて切ない思いもした


けれど、甘くてドキドキして暖かい思いも知ることができた



そしてこの桜の木の下・・・



ここは私たちが出会った場所・・・


切ない思いをした場所・・・


そして私たちの恋がかなった場所・・・



ここは私たちの思い出がたくさん詰まっている場所なの



だからこれからもきっとこの場所で成長していく



美しく咲く誇る淡いピンク色の下・・・


桜が舞う木の下で・・・





―――――――――――



最後まで読んでくださりありがとうございましたww


楽しんでいただけると幸いです。

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