【 Goku × Chichi 】Short ss

□思い出の写真
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【思い出の写真】







悟空は修行が終わると、一人帰宅する




「チチ〜、今けぇったぞ〜」



悟空はだらしなく、語尾を延ばして帰りを知らせる




いつもなら、ここでチチは出迎えてくれるはずなのだが、今日に限ってはチチの気配すらなかった




悟空は時間を確認すると、まだお昼過ぎ程度―――




「……そっか、チチ買い物行ってんのか…」




悟空は勝手に解釈すると、テーブル椅子へと腰掛けてチチを待つことに決める


だが、何もしないのはやはり暇すぎて……



悟空は暇つぶしになることがないかと部屋を見渡す




そしてひとつ――


目に入るものがあった




それは写真立てにある数枚の写真……



悟空は椅子から立ち上がると、飾ってある写真を手に取る




だが、そこには一枚も自分の居る写真がなかった




全て、チチや悟飯、悟天などの写真で――――


悟空は少し切なくなってしまった




「……オラ、随分死んじまってたもんな…」



悟空は悲しい思いを振り切るようにその写真たてを元の位置に戻す





だが―――


ふと、ひとつの写真たてが目に入った



その写真立ては伏せてあって、写真が見えなくなっていた




悟空は倒れたんだな、と思うと、その写真たてを手にとる


だが、そこに移っているのは………



紛れもなく、結婚式で撮った自分とチチの写真



悟空は嬉しい気持ちが胸を熱くすると同時に、

どうして伏せてあったのかが気になってしまった




だが、悩んでいる暇もなく―――



玄関の鍵が開けられると、扉が開く




悟空は気でチチだと判断すると、扉を見つめる



そして悟空の判断は見事に当たって、チチは両手にたくさんの買い物袋を抱えていた




「…チチ、おかえり」



悟空は無意識に写真たてを持ちながらチチへと歩み寄る



チチは悟空が居たことに驚いたのか、大きく目を見開くものの、嬉しそうに微笑む




「悟空さ、今日は早く帰ってただな」



「あぁ、何か身が入らなくてやめてきたんだ」



「そうだっただか、それより…悟空さ……?なして写真たてなんて持ってるだ?」




チチは悟空の手に握られている写真たてを見つめて言う



すると、悟空は持っていたことすらわからずに自分の手元を見つめる




「あぁ……この写真たて倒れてたから戻そうと思ったときにチチが帰ってきてさ、戻すの忘れてた」



「……そうだか、だったらおらが戻しておくから貸してけれ」



チチは手一杯に持っていた荷物を玄関へと置くと、悟空の前に手を差し出す



悟空は何を言うでもなく、素直にチチに差し出す



「……じゃあすぐ飯さ用意すっから待っててけれな」



「おう」



悟空は短く答えると、先ほどまで座っていたテーブル椅子へと腰掛ける



チチは渡された写真立ての写真を見る



すると、小さく微笑んで悟空に言う




「…悟空さ、これ倒れてたんじゃなくて倒しておいたんだべ」



「………へっ!?何で?」



悟空は唯一の自分が写った写真だったために少し驚く



だが、チチは小さく微笑んで写真を見つめる




「………だって悟空さ、ずっと死んじまってたべ、だからこの写真さ見ると辛くなっちまって見ないようにしてたんだべ、だから悟空さの写った家族写真は飾らなかったんだべ、でもこの写真だけはしまえなくて…でも見るのも辛いからしまわずに伏せておいたんだべ」



「それでオラが写った写真なかったんか……」



「でも、今は隣に居てくれっから見ても辛くなくなっただよ、だから写真立ても変えなくちゃなんねぇだな」



チチは優しく微笑んで、その写真たてを元あった場所へとおく



そして悟空の隣の椅子へと腰掛ける



「悟空さ、悟飯ちゃんと悟天ちゃんが帰ってきたら家族写真撮ろうな、そうしたら飾れるべ」



「あぁ、早く帰ってこねぇかなぁ」



悟空は呟くように口にする



だが、チチは嬉しそうに笑うと、心の中で呟く




――――寂しい思いさせちまってごめんな



前は写真撮るのすごく嫌がってただに



でも今は賛成するなんて……





チチは呟くと、悟空の頬に口付ける




「……どうしたんだよ」



悟空は口付けられた頬に触れて言う



だが、チチは小さく笑う



「別に何の意味もねぇだよ」



そういうと、チチは席を立ち上がって袖をまくる



そして椅子に座っている悟空を見つめると、笑顔を作る



「皆が帰ってくる前に飯さ作るから待っててけれな」



「…随分、張りきってんな」



「あったりめぇだ!」



そういって笑うと、チチはリビングを後にして、キッチンへと入っていった




そして悟空も自分の写る写真を撮りたくて心が弾んだのだった







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