【 Goku × Chichi 】Short ss

□Last smile
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【Last smile】






――――チチがウイルス性の心臓病の病に掛かってから約、一年半――――



チチは医者に言われていた余命より6ヶ月も長く生きながらえた


だがチチはそろそろ限界が近いと気づき始めたころ・・・




・・・・・ガラガラガラッ・・・・・・



音を立てながらチチの個室の扉が開けられた


チチは窓の外に目を向けていたが開けられた音ともに
扉の方に視線を移した



するとチチはできるだけの笑顔で精一杯笑って


「・・・悟空さ・・・」


と一言、呟いた



悟空も小さく笑うと


「・・・チチ・・・元気か?」


「・・・まぁまぁだべ・・・それでお医者様はなんていってただ?」


そうチチが尋ねると悟空は少し黙った




―――――――――


「チチさんの病気は確実に進行してます。もう、限界に近いと思いますので後はチチさんの気力次第です。」


そう、医師に告げられていた



―――――――――



だが悟空は笑いながら


「大丈夫だって・・・言ってた」


「そうだか」


と言うと、チチは窓から病院の庭を見つめた



悟空はチューブに繋がれているチチの手を握ると


「外・・・行きたいか?」


と尋ねるとチチは縦に首を振って


「・・・悟空さと新婚旅行にいきてぇだ・・・海外に遊びに行って楽しんで・・・けど今の体じゃ無理だべな」


と少し俯いて小さく笑った



悟空はチチの横顔を見ながら


「チチの病気が治ったらどこにでも連れてってやるよ・・・海外でもどこでも連れてってやる」


そういってチチの髪の毛を撫でた



チチは気持ちよさそうに目を瞑ると


「ぅん、絶対に病気さ治して悟空さに連れてってもらうだよ」


そういうとチチは悟空の顔を見て嬉しそうに笑った





―――――――――――――




・・・・・・それから数日後・・・・・・・



悟空はいつものように病室を訪れてはチチと未来のことを話し合って
自分たちなりに楽しく暮らしている中・・・・・・



チチは急に胸に鋭い痛みが走り


「・・・ぁ・・・っ!」


と痛みに耐えているような声を上げた



そして心臓部を抑えてチチは布団を握りしていると
隣の椅子に座っている悟空は立ち上がって


「チチ!?発作か!オラ、すぐ医者呼んでくるな!」


と病室を出て医者を探そうと思ったがチチに服の袖を掴まれて


「・・・っ・・・悟・・・空さ・・・ぁ・・・ここに・・・いて・・・っ・・・」


と辛そうに声を上げながら必死に訴えた



だが悟空は冷や汗を掻きながら


「でも、このままじゃ死んじまうだろ!?早く呼びにいかねぇと!」


「・・・・・・呼びに言っても・・・もう・・・・・・っ・・・どうにもならねぇ・・・だから・・・最期まで・・・ッ・・・・・・一緒にいて・・・」


と強く訴えた



悟空はチチは予感しているのだと気づいて


「・・・チチ!何言ってんだよ!最期なんて・・・」


「・・・おら、お医者様に言われてた・・・・・・次・・・発作が起きたら・・・・・・っ・・・手の施しようがねぇって・・・」


とチチは悟空の言葉をさえぎって言い放った



悟空は小さな涙の雫が伝うと


「・・・・・・っ・・・わかったよ・・・傍にいてやる・・・・・・」


と静かに呟いてチチをそっとベッドへ寝転がらせた



チチは精一杯、笑顔を見せると


「・・・・・・悟空さ・・・っ・・・泣いたって変わんねぇ・・・・・・ぁ・・・だから、笑って・・・・・・?」


とチチは辛そうに肩を上下させながら呼吸を繰り返した



悟空はチチの頬をそっと撫でながら、精一杯笑おうとした


だが、笑うどころか涙が溢れ出しては頬を伝って・・・・・・



チチは痛みに耐えながら小さく笑うと


「下手くそ・・・おらのほうがよっぽど上手だべ」


「・・・・・・っ・・・チチには・・・敵いっこねぇよ・・・」


「・・・・・・だべな・・・でも約束は破るような・・・・・っ・・・やつでねぇから最期のお願い・・・聞いてな」


といって悟空の手を握ると


「じゃあ、まずキスしてけれ・・・」


といって小さく笑った



「・・・そんなんだったらいくらだって聞いてやるよ」


そういうと悟空はチチの呼吸器を取り外すと口付けた



チチはゆっくり目閉じると優しく受け入れて・・・

悟空は何度も角度を変えてキスをした



チチはやっと開放されると


「・・・じゃあ・・・もう一つな・・・ぜってぇおらを追いかけねぇで・・・」


「・・・・・・えっ・・・!?」


悟空は驚いたように目を見開くと
チチは微笑んで


「おら・・・何か忘れて・・・・・・幸せになってけれ・・・・・・頼んだだぞ」


とささやくように呟くとゆっくり目を閉じた



そして目を閉じる間際に


「・・・大好き・・・ごめんな・・・・・・でもこんなおらを好きになってくれてありがとう・・・」


そう呟いてチチは眠るかのように息を引き取った



すると病室には心停止音が鳴り響いた



悟空はそっとチチの体を揺らして


「・・・・・・チチ・・・?・・・なぁ、チチ!目開けてくれよ!!」


そういって体を大きく揺さぶったがチチの目が開くことはなく・・・・・・




―――――――チチがなくなってから数日―――



悟空はチチの火葬式などに出席することはなく・・・・・・


あれからずっとチチと暮らしていた家で籠もっていた



数日間はほとんど食事をすることもなければ
水分すらもろくにとっていなかった



そしていつも頭の中を占めているのはチチの存在のみ・・・・・・





・・・・・・・・・チチ・・・・


オラ・・・チチの約束守れそうにねぇや・・・・・・




笑ってなんか生きていけねぇ・・・


・・・おめぇがいねぇと幸せになんてなれっこねぇよ・・・・・・




もしかしたらさ・・・


このまま、何も食べなければ死ねるだろ・・・



そうしたら、おめぇに会えるって・・・



そう思っちまう・・・・・・




だが悟空は何をするでもなく、そっと涙を流しながら
真っ白な天井を見続けていた



そして脳裏に過ぎるのは・・・


・・・・・・チチの死の間際まで見せていた笑顔だった・・・・・・




チチの笑顔だけが残っていて・・・





悟空は死ぬこともできず・・・


笑って生きることもできず・・・・・・




・・・・・だが悟空はそれから・・・・・・


接吻によってウイルス性の菌が体に入ったのか

2年もたたずに・・・この世を去っていった・・・・・・


それはチチとまったく同じ病気・・・


・・・・・・心臓病にかかり・・・・・・



だが悟空は自分の最後の日・・・


チチが去ったあの日から初めて笑った



・・・・・・もう少しで会えるんだ・・・・・・


そう願って嬉しそうに笑いながら痛みなども忘れて

この世から静かに息を引き取ったのだった

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