【 Goku × Chichi 】Short ss

□ひまわり
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悟空がウーブと修業に出た日から
早4年が過ぎた








でも、チチは毎日空を見上げて
悟空の帰りを待っていた





だが、悟空が帰ってくる前に
チチの体は癌の力によって蝕まれていった





治療すれば治ったものの、チチは


『悟空の帰りを待っていたいからずっとここにいる』


と言って手術を受けることはなかった






そして、抗がん剤で命を延ばそうともせずに
チチはただただ、空を見上げて悟空の帰りだけを待っていた




だが、悟空の帰りが早いよりも
命を削る癌のほうが早く進行し、チチは立つ事も間々ならなくなってきた




悟飯や悟天、ビーデルに看病をしてもらいながら
必死に生きてきたチチだったが等々、最期の日も近づき始めていた






そして、今日・・・





ビーデルはチチの看病をしている



「お母さん、ちょっとパンのことを見てきますね」


「その前にビーデルさ・・・そこの窓、開けてくれるだか?」


チチがそう言うとビーデルは微笑んで窓を開けた




すると、涼しい風と共に桜の花びらが数枚、入り込んできた




「お母さん、風が少しあるけど平気?」


「平気だ・・・このくらいの風が一番好きだ」


とチチは昔と変わらない笑顔で桜の花びらを見つめた



ビーデルはその笑顔に安心し、


「じゃあ、少ししたら戻りますね」


そう言って寝室の扉をゆっくりと閉めた



チチはビーデルが降りていく階段の音を確認すると
チチはゆっくりと体を起こした



そして、草原の中に広がる桜の木をチチは見つめた


「今回の夏は越えられねぇだな・・・」


とチチは寂しそうに言った




そう・・・




チチは最期が近づいているということを感じていた





「向日葵・・・見たかっただな」

とチチは桜の花びらに触れながら囁くように言った




チチは向日葵が大好きだった





何故ならずーっと太陽を見ていられるから・・・




悟空を太陽に重ねていたチチは
向日葵を自分に重ね、ずーっと太陽のような悟空を見続けていた






だが、今年の夏は向日葵にはなれないことを
チチは誰よりも悲しく思っていた




「悟空さ・・・悟空さは最期のときくらい帰ってきてくれるだか?」


チチは小さい声で言いながらゆっくりと体を寝かせた



「悟空さ・・・悟空さ・・・」


チチは目を閉じながら名前を連呼すると


「何だ?チチ・・・?」


と悟空からの返事が返ってきた




チチは閉じた目をゆっくりと開けて
声がしたほうへ向いた




悟空は窓に手を置いていて
ゆっくりとチチに歩み寄った


「悟空さ・・・か?」


チチは震えた声で言った



すると悟空は壊れ物を扱うようにそっとチチの手を握った


「チチ・・・チチ・・・?」


そう言った悟空の目には涙がたまっていて
そっと、頬を伝った



チチは目を見開いて驚いていた


「チチ・・・傍にいてやれなくてすまねぇ・・・」


と言い、悟空は涙を流しながら
チチをそっと、抱き寄せた



チチは力の入らない腕で悟空を抱きしめた


「悟空さ・・・帰って来てくれただな?」


「・・・あぁ・・・でも、オラ・・・何にもできねぇ・・・」


「いいだ・・・悟空さが傍にいてくれさえくれればおらはそれだけで嬉しいだ」


とチチは涙声になりながら必死に笑った



悟空はそっと体を離した


「チチ・・・オラ、チチが先に死ぬなんて嫌だ・・・だから死なねぇでくれ」



悟空はたくさんの涙を流しながら言うとチチは


「ごめんな?おらだって悟空さを置いて死にたくなんかねぇ・・・でもこれはおらの寿命だ・・・ドラゴンボールでもどうにもならねぇ・・・」


そう言ってチチは涙を流しながらも笑っていた



「オラ・・・どうしたらいい?どうしたら・・・」


「悟空さ・・・ずっとおらを見守っててけれ・・・最期まで・・・太陽みたいに笑っててけれ・・・」


チチはそう言ってそっとキスをした




そしてチチは悟空の耳元で最期の言葉を囁くと
力なく、ベッドへ倒れこんだ




「チチ・・・チチ?・・・チチ!」


そう言って悟空はチチの体を揺すったが
その大きな黒い瞳が開くことはなかった




すると、悟空は今まで以上に涙を流し
チチを抱きしめた




そして、悟空はチチが最期に囁いた言葉を頭の中で連呼した






『おらは悟空さが生き続けてる限り、悟空さの心の中で生き続けるだ・・・どうしても逢いたくなった時は向日葵を見てけれ?おらはずっと向日葵と自分を重ねて太陽のような悟空さを見続けてきただ・・・だから死んじゃなんねぇだ・・・おらはどんなときでも悟空さだけが大好きだっただ・・・ありがとう・・・』






悟空はその言葉を思い出しているとチチをそっとベッドへ寝かせた





そして悟空は永遠の眠りに着いたチチに触れるだけの優しいキスをして
チチを見に来た窓から気を消して走り去っていった





その後、悟空の気は誰にも掴めずにいたが
チチの亡くなった日になると必ず、寝室には向日葵の花が置いてあった




そんなことをするのは間違いなく
悟空しか存在しなかった






だが、悟空は向日葵の花言葉を知らずにいつも置いていっていた




向日葵の花言葉とは・・・






『私の瞳はあなただけを見つめている』






と言う花言葉であった






その言葉はぴったりと二人に合っている花であった




お互いに惹かれあい、永遠の愛で愛し続けている












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次のページからはその四年後です。
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