NOVEL
□正直に、好きって言えよ
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『……結局渡せなかった…』
2/14日。
バレンタインのこの日、千鶴は沢山のチョコを渡した。
しかし本命チョコは未だに机の横にかかっていた。
『うわ、もう真っ暗…』
冬のせいか既に外が真っ暗だった。
帰り支度をして渡せなかったチョコを持つ。
その瞬間…
ガラッ
「千鶴?まだいたのか?」
突然教室の扉が開いたかと思うとそこには教頭の土方歳三が立っていた。
『土方先生…っ!』
千鶴は勢い良く立ち上がる。
「陽が沈むのが早ぇんだから気を付けろよ」
『はい…』
実は千鶴が本命チョコを渡したかった相手はこの歳三だった。
しかし教師と生徒という立場から勇気を出して渡せなかったのだ。
『じゃあ失礼します』
胸が苦しくなる感覚がして千鶴は足早に去ろうとした。
「ん?ちょっと待て」
歳三は不意に千鶴の腕を掴んだ。
『な、何ですか?』
「それチョコレートだろ。渡さなかったのか?」
『…それは…』
袋をぎゅっと握る。
「……正直に好きって言っちまえよ」
『え…?』
思ってもみなかった言葉に顔を上げた千鶴の唇に、何か柔らかいものが当たった
。
それが歳三の唇だと理解するのに時間はかからなかった。
『せ、先生!?』
「このチョコ、俺にだろ?」
歳三は千鶴から袋を奪いニヤリと笑った。
『ど、どうして…』
「朝からこの袋持って俺に話しかけようとしてただろ?」
(………最初からバレてたんだ…)
そう思うと顔の中心に熱が集まるのが分かった。
「ほら言えよ」
その言葉に意を決したように歳三の目を見据えた。
『好きです』
返事の代わりに降ってきた甘いキス。
2人は二度目の口づけをかわした。