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□たとえ話(水純、水明独白)
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たとえば、父さんがごく普通の警察官だったとして。

たとえば、家族が常にともにあったとして。

たとえば、俺があの日の少年のまま育ったとして。


それが幸福であっただろうか。




こんな狭いベッドの中、隣に寄り添う彼の鼓動が肌で感じられる。

時折、寝息とともに吐き出される俺の名前。小学生の頃から今まで変わらない呼び名。

返事のかわりに、滑らかな額にそっとくちづける。大丈夫、俺はここにいる。

それが伝わったのかどうか。可愛い恋人は、むにゃむにゃと満足そうに微笑んだ。

ああ、なんて、愛しい。


たとえば、禁じられた一線を越えることがなかったとして。

たとえば、この葛藤と罪悪感を抱くこともなかったとして。

たとえば、俺と純也が出会わなかったとして。


それが幸福であっただろうか。


夜更けの部屋で、他でもない彼に気づかいつつ煙草をふかすこんな今この時よりも、果たして、幸福だったのであろうか。



口に出さない問いかけが、紫煙とともに吐き出されて、また、消えた。







(否、全てはこの時間への、必然)

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久しぶりの兄さん。みじかいよぅ。


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