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□犬鬼灯(道羽)※
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「風海先輩って可愛いですよね」

「そーね」

「物腰柔らかいし、線も細くて、なんかこう、ぎゅっとしたくなっちゃいますねー」

「なに、ひょっとして惚れちゃったの?」

「はい」

「まじで?」

うひ、と愉しそうに笑うこのセンパイは本当に性根ねじ曲がっているなあなんて今更ながらに思う。
人の恋愛話をそんなに愉快がれるとは全く得な性格だ。

「でもねぇ、実は俺もなんだよね」

「なにがですか?」

「惚れちゃったの」

風海センパイに、とセンパイは笑う。あの人の名前がそんな気持ち悪い笑い声と一緒に出てくることに苛立ちを覚えた。…まあ、態度には出しませんけど。

「えー、じゃあ僕、センパイと恋のライバルなんじゃないですかー」

「そーそー、わかったらさっさと諦めなさいっての、『名無し君』?」

「うわひどいっ、今の僕には立派な名前があるのに−−ぃぃっ!?」

唐突に与えられた刺激になんとも間抜けな声を出してしまった。
軽く睨みつけてもセンパイは、そーだっけ?なんてニヤニヤととぼけるだけで。

今、僕と道明寺センパイはベッドの上にいる。

彼から僕に与えられたマンションの一室内。
もちろん、大の男が二人で仲良くお泊まり会…なんてことはなく、所謂恋人同士の営みの真っ最中だ。

今まで交わしていた他愛のない会話も、情事の最中のものかと思うとなんとも滑稽で笑えてくる。その間にもセンパイの動きは止まることはなくて。

本気とも冗談ともとれない言葉が行き来する。

「…ぼく、はっ!本気、ですよ?」

「そ?なら俺も本気」

「ふざけないで…っぅぁ!」

胎内をえぐられるような刺激に堪えきれず仰け反れば、そのままぐい、と髪の毛を掴まれた。痛いんですけど。

「……ていうかさあ」

普段の飄々とした態度からは考えられないような冷たい声を、時々この人は出す。
今だって……ああ、なんて目をするんだろう、この人は。

「俺等に『本気』なんてもン、あると思ってる?」

そんな言葉とは不似合いな卑猥な水音がいやに耳につく。

気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。

でも、それは、なにが?

僕は言う。

「それでも−−本気、です…っ」

なんとか絞り出した言葉にニンマリと笑って、センパイは僕にこれ以上なく優しいキスをした。

……ほんとうに、気持ち悪い。




(花言葉は、嘘つき)


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