main
□本末転倒(水純)
1ページ/1ページ
人間社会というのは厳しいもので、例えば愛する恋人といつまでも一緒にいたいと思えば、そのためには住処や食糧の調達だけでなく、人間らしく暮らすためにいくらかの金銭も必要になる。要するに、働いていかなければならないのた。
こんな当たり前の願いすらただでは叶ってくれない。
世知辛い世の中だが、その中で恋人とのささやかな幸せを勝ち取るためにも、自分は今日も仕事に勤しんでいるのだ。
『でも兄さん』
このところ講義や学会が立て込んでいてなかなか会えない恋人が、俺の力説に携帯電話越しに可愛らしく不満げな声をもらす。
『その仕事のために恋人に愛想をつかされちゃったら、意味ないよね』
じゃあね、とこれまた可愛らしい呟きとともに、携帯電話はぷつりと黙った。
(ケーキの箱を片手にインターホンを鳴らしたのは、それから一時間後)
************
仕事とアタシとどっちが大事なの!?な純也君。
それにしても短い。