頂いた素敵な夢

□心からの敬意をこめて
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「ねぇねぇ、君1人?」

 女性を追いかけて走っていれば、なんていうお馴染みの誘い文句が耳に入ったので、イラッとした。
 だがしかし、声をかけられたのはあたし達じゃないっぽい(まぁあたし達は二人だし)標的が自分じゃないことに安堵しつつ声のしたほうを振り向くと、男2人にさっきに女性が囲まれていた。ひい、2人で1人をナンパですか不良こわい……。
 あっちゃんは能力的にも巻き込まれたら危ないし、だったらあたしの方はでかいし多少は力はあるし、能力的にも大丈夫…! の、はず! よし! 
 あっちゃんに取りあえず少し隠れてて貰って、あたしが声をかけよとする。
 ってああああ!! 男のうちの1人が彼女の肩に腕を回そうと詰め寄った。

「止め、」

 しかし、言葉はそこで途絶えた。

「さわんじゃねえ!  鏡で自分の顔見て来い!」

 彼女のボディブローが男に命中し、もう1人が呆気にとられている。まあそんなあたしもなんだけど。
 しかし、男の人の顔に沸々と怒りがわき上がっているのが分かる。

「てめ、顔が良いからって調子…」
「調子のってんのはアンタだぁぁぁぁ!」

 嫌というほど溜まった鬱憤を全て足に込め て、飛び出して男の背中を思いっきり蹴ってやった。

 目の前にいた彼女が今度は呆気にとられていて、今がチャンスとばかりに、あたしは彼女とあっちゃんの手を取って走り出した。




*****




「はぁ、はぁ…。あの、大丈夫ですか…?」
「あぁ、大丈夫だ。その、さっきはありがとな」

 ニコリと微笑む彼女の顔は輝いており、これを美少女と呼ぶんだろうなと感動した。

「そっちの君も大丈夫か?」
「あ、はい…。すみません大丈夫です…」

 少しあたしより息を切らしているあっちゃんに、彼女が声をかける。

「お前たち無理するな…。女なんだから」

 いやいや! 貴女も女性です! 美少女です!!

「あんなの俺一人で何とかなるのだから、危ないことに手を出すな」
「で、でも心配ですし…」
「まあ、でも嬉しかった。本当にありがとな」

 やだイケメン!! なんて、あっちゃんと顔を向き合いながら、思わず笑みがこぼれる。
「…えっと、もしかして、お前らはいまから 買い物いく予定とかある?」
「え? …あ、はい。遊びに来ていたので。行こうとは思ってます」
「じゃあここは危ないし、途中まで一緒に」
「いえ!! 悪いですし! …な、情けないですし…」
「え?」
「なんでもないです…」

 このまま断るのも、お姉さんの好意を無駄にすることになっちゃう。というか守るつもりで追いかけたのに、逆に守られるなんて恰好がわるい。
 でも、あっちゃんも居るし…。

「お願いしても、良いですか?」

 あたしがそう言えば、お姉さんは笑顔で了承してくれた。

「俺は華扇翠。宝珠院学園ので生徒会長をやってる。ちなみに高2で…えっと 、」
「私は南彩鈴といいます。時羽学園高等部一年です。それでこちらが、」
「北村由希です。あっちゃ…彩鈴ちゃんと同じ高等部一年です」

 た、たしかに自販機の時、背をかがんでもらったりして、これであたしのが年上だったら…って思ったのかな? けど年下のあたしより礼儀正しそうで、なによりあたしよりしっかりしてそうだ。年上という点を抜いても、しっかりしてる…お姉さんで間違いなかった…。

 ど、どうやらあたしが迷惑をかけるあの出会いの前、翠さんはあたしの奮闘劇に気が付いて来てくれたらしい。自販機使うついでに助けた、じゃなかったんだ…さらに申し訳ないぞ! また「ありがとうございます」のお辞儀に、翠さんは手を振って気にするなの意を示してくれた。 ううう…。


 その後会話は続き、だんだん人々のにぎわいも近づいてくる。ようやく人里についたときの喜びに近い感覚があたしに込み上げてきた。もと来た道を戻って、路地を通らずに遠回りすればいい話だったかもしれないけど。これはこれで、いい経験になった。

「翠さんって生徒会長なんですよね…?」
「ああ、そうだな」
「何かしっかりしてて格好いいなあ、と。あたしも! あの、格好いい先輩がいて…」

 上手く言えないなぁと思わず苦笑い。
 するとあっちゃんは小さく笑みを浮かべながら口を開く。

「私達は委員会に入っているのですが、やはり委員長は格好良く思えます。翠さんもきっと皆さんから憧れられているのでしょうね…」

 あっちゃんがそう言えば、翠さんはうーんと腕を組んで、軽く首を傾げる。

「そういうのは俺よく分からねえけど、でもそうだったら嬉しいよな」
「ぜ! 絶対そうですよ! あたし男だったら間違いなく惚れてます!」
「ははっありがとな」

 そう言って笑いながら頭を撫でる仕草は、どこか慣れているような気がして、やっばり年上でお姉さんなのだと、改めて実感した気がした。
 そして翠さんが顔を向けた方向には、どうやら目的のショッピングモール近くまで出てこれたらしい。こうして安全に出てこられたのも翠さんのおかげだな…拝もう!!

「やっと到着! 不良との遭遇もなし!」
「はぁ〜…ありがとうございます、翠さん」
「二人はこれからどうするんだ?」
「私たちは買い物の予定なのですが…翠さんは?」
「実は俺もここに用事があったんだ」

 お、おお雲行きが…あたしにとっては嬉しい方向に…。いやさすがに買い物まであたしがついていくのは悪いような…でもここで分かれちゃうのはあたしがお世話になりっぱなしENDみたいで悪いし…。

「何買う予定なんですか?」
「あー…ちと服をな」

 学校帰りに買おうと思っていたらしい。生徒会長は休日もないのか…大変だなぁ…。
 あ、じゃあ…!

「あの、服一緒に見ても良いですか!?」
「あぁ、構わないが…そっちは良いのか?」

 ちらっとあっちゃんを見れば笑みを浮かべている。

「是非、ご一緒したいです」

 ぱあっと顔が明るくなったのが分かる。

「是非! 翠さんの服を選ぶのお手伝いさせて下さい!」
「でも、悪くないか?」
「全然! 寧ろ今日のお礼を込めて、こんなので申し訳ないくらいですが…」

 たははっと苦笑いすれば、翠さんは今日何度目かの、綺麗な笑みを見せた。

「ありがとな」

 その言葉に、あっちゃんと二人で向き合って笑みをこぼした。



心からの敬意を込めて



→あとがき(お礼文)
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