SHORT★STORY

□なりたいものとなれるものは違う
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「『男女逆転コンテスト…?』」


朝、SHRでの龍也先生の言葉にいち早く食いつく私と翔。


「そうっ学園内で行うイベントだ!」


『こんなの一体誰が提案したんだろ…』


馬鹿なことを考えるなぁ、と私は溜息をつく。


「早乙女さんでしょうね」


冷静に呟のは一ノ瀬トキヤ。


『ですよねぇ』





「そのトオーリ!!ミ―が考案したことなのデェース!!」


―ドゴーン!!―


『んぎゃはぁっ…!!』


突然の爆発音私は驚いて椅子から転げ落ちてしまった。


ミシミシと音が聞えたのに気がついた時には遅かった。
私の数センチ離れたところの床から派手に登場した学園長ことシャイニング早乙女。


「大丈夫かいレディ?」


レンの手を借りて椅子に座り直す。


「それでそのコンテストの内容は?」


その話題に意外に食いついていくトキヤに驚きながらも耳を傾ける。


「そのままの内容デェース!男子生徒は女子生徒に!女子生徒は男子生徒になるのデェース!!」


「まぁ簡単に言えば男子は女装、女子は男装してそれぞれ一番なりきれた生徒が優勝ってことだ」


簡単に言い直してくれた龍也先生には感謝だが聞き捨てならないキーワードがあった。

“男装”

私が一番嫌い…いや恐怖を感じる単語といってもいいだろう。
なんせあれだけ苦しめられたのだから―


私は産まれたばかりの頃は誰からも可愛い女の子と言われてきた。
しかしいつからか“男の子っぽいね”と言われるようになったのだ。
“確かに髪の毛はずっとショートだが、ごついわけでもなく、背が高いわけでもない。丸い目、ふっくらした頬、濃いめの眉という顔つきだけで散々言われてきた。
運動ができないときには“男っぽいのに運動神経悪いの?”と言われ、好きな人ができて勇気を振り絞って告白してみれば“お前男っぽいから嫌だわ”と傷つけられた。

だからせめて格好だけは女の子らしくと制服もフリルをつけたり色々アレンジをした。
そのお陰かこの学園に入ってから“男っぽいね”とは言われなくなった。


なのに―
なぜこんなイベントを開催する。
なぜこんな私に男装などさせる。
あぁ神はどこまで残酷なのだろうか―



「だが各クラス一人ずつだ!」


『え?』


龍也先生が仏に見えた。
一人でだけでいい=そこらのでしゃばり男子が女装をする
私は参加しなくてすむということだ。


「希望参加ということですね」


トキヤは依然と落ちついている。


「そう―」


「ミーが決めマース!!」


龍也先生がそうだと頷こうとした瞬間悪魔が舞い降りた。


≪まじかよー≫≪無理なんですどぉ≫


ざわつく教室。


『大丈夫私は女の子…大丈夫私は女の子…』


そんななか私は必死に自分に暗示を唱えていた。


「ビシィッ!」


学園長の大きくてゴツい指はある少年を指した。
その少年は自分だと判断すると教室のドアをめがけて走りだした。
しかしそんな逃走も虚しく早乙女という悪魔だか魔物だかの怪物に捕らわれてしまったのだった。


「いーやーだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


必死な抵抗も虚しく翔はあっという間に教室の真ん中で拘束されてしまった。


「俺は絶対やんねぇからな!」


この場に及んでまだ逃れようとしている翔に私からとっておきの一言。


『男なのに逃げるの?』


“男”という言葉を強調して言うと翔はピクッと反応する。


「にっ逃げねーよ!!」


『じゃあ諦めて女装するのね』


「うっ…」


翔は顔を青ざめる。


実にいい気分。
これでやっと私は皆が認める女の子となったのだ。


『それにもうやる気満々だし』


「誰が―」


翔が言い終わる前に私はある方向を指差した。
ちなみに今こちらに物凄い勢いで走ってきている。


「翔ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」


「げ、那月!?」


そう猛スピードでやってきてるのは那月。
まだ少し離れているが両手にフリフリヒラヒラぶりぶりの洋服を持っているのははっきりと見えた。










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