会長はメイド様!
□お姫様はメイド様!『温泉旅行編』
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☆…☆…☆…☆…☆…☆
星華王国に来てだいぶ月日が流れた。美咲はこの国の王子、拓海の専属メイドとして暮らしていた。が・・・
【寄るな!!この変態宇宙人!】
【え〜いいじゃんV俺ご主人様だし?】
【仕事ができんじゃないか!いいから離れろ!アホ碓氷!】
城中に響き渡る美咲の声。星華の城では毎日このような事が繰り返されていた。
【邪魔だ、変態王子】
【ひどいな〜美咲ちゃん】
拓海はここ数日やけに機嫌がいい。ついこないだまで陽向の事で毎日不機嫌丸出しだったのが嘘のようだ。
【王子ったらご機嫌ね】
【そりゃあね・・・Vあんだけいろいろあったんだからね】
【雅ヶ丘に陽向君・・・もうこれ以上何も起こらなさそうだし、王子も猛アタックって感じ?】
離れた所から二人を見守るメイド達。美咲は掃除用モップを振り回し、拓海を追い払おうとしていた。
【だから寄るなって言ってるだろ!はーなーれーろー!】
【もうVせっかく美咲ちゃんと俺の邪魔者がいなくなったんだからいいじゃんV】
【何が邪魔者だ!仕事の邪魔してんのはお前だろ!】
【美咲ちゃん、スゲー可愛いV】
【人の話を聞けー!!】
そんな麗らかな日々が流れたある日、国王と王妃が帰ってきた。
【王子、長く留守にしてすまんかったな】
【メイド達も王子の世話ありがとう。疲れたでしょう、旅先で良い所を見付けたの】
王妃は地図を広げ星華王国から少し離れた場所を指差した。
【この辺りは温泉で有名なのよ。長い留守を任せてしまったお詫びに王子も行ってきなさい】
そういう訳で拓海は数人のメイドを連れて温泉旅行に行く事になった。
【美咲ちゃんと温泉旅行だV】
【・・・王子、二人だけで行く訳ではありませんのでセクハラ行為はしないで下さいね】
美咲は拓海の部屋で拓海の旅行の支度をしていた。
【そんな事言って美咲ちゃん、俺と二人きりで行きたかった?】
【まさか・・・誰がこんな変態宇宙人なんかと】
【アハハ・・・俺は美咲ちゃんと二人きりで行きたかったな〜V】
【・・・そうですか///】
美咲はぷいと顔を背けた。顔を赤くして素直になれない事を悟られないようにする。
(・・・何で私がこんなにドキドキしなくちゃならないんだ)
【王子、旅行の荷物はこれが全てですので。私は戻ります・・・】
【美咲ちゃーん】
【はあ・・・何だよ?まだ何かあるのか?】
部屋を出ようとした美咲を拓海はご機嫌な様子で呼び止めた。
【温泉で俺の背中流してねV】
【!?///だっ誰がするか!!自分でやれ!!】
美咲は更に顔を赤くさせて部屋を飛び出した。
美咲もメイドの部屋に戻り、旅行の支度をする。
【王様も驚いてらしたわ。美咲ちゃんが雅ヶ丘帝国のお姫様だって事】
【・・・】
【でも王様も王妃様も美咲ちゃんの事歓迎していらしたわ。だから大丈夫よ】
【はい・・・】
さつきは美咲を励ますように言った。しかしさつきの後ろからは萌えの花がちらついている。
【王子との事も気付いていらっしゃるみたいだしV王様も王妃様も公認してるみたいだからねVV】
【は?】
【この温泉旅行が勝負よねV愛する人と二人きりの部屋で・・・ムフフフVあ〜萌えの花が抑えられない〜V】
【!?///】
美咲は真っ赤になる。旅行の王子のお供は美咲を含めさつきとエリカ、ほのか、すばる。後男の護衛も少々。
考えてみればある意味危険だ。知らない土地で王子とたぶん一緒。
(さつきさん達もこの状況楽しんでるみたいだし・・・///)
王子と旅行、そう考えると嬉しいような気もあるが緊張して落ち着かない。
(王子と旅行・・・・か)
数日後、美咲達は温泉旅行に出掛けた。ゆっくりと馬を走らせ出発する。
【・・・何でお前は馬車に乗らないんだ?】
【ん〜?だってこの方が美咲ちゃんとより密着していられるでしょV】
【密着せんでいいわ!///ってどこ触ってんだよ!?///】
【美咲ちゃんのお腹V】
【ふざけるな!!///変態!バカ王子!って、ちょっ・・・やっ】
拓海と美咲は馬車には乗らず馬に跨がり、美咲は拓海の前に乗っていた。
馬車にはさつき達が乗り、後ろから萌えの花を飛ばしていた。
【美咲ちゃん王子Vあ〜VV】
【さつきさん、落ち着いて下さい・・・】
美咲は頬を赤らめ背中に拓海の温もりを感じていた。
恥ずかしいが拓海は美咲を離そうとはせず、美咲も諦めた。
【あ、大人しくなった】
【もう疲れた・・・お前の相手してたら溜め息しかできなくなる】
【・・・それって・・・恋煩い?】
【アホか!!///】
夕暮れ時にやっと目的地までたどり着き、温泉があるという宿に入った。
【星華王国からわざわざようこそおいで下さいました】
出迎えてくれた人に案内され部屋へと向かう。
【・・・で、何でこうなるんだ!?】
部屋はメイド達に二つと護衛達に三つ、そして拓海と美咲には特別スイートルームが用意された。
【だって俺王子だし?】
【そんな事はわかっとるわ!私が言いたいのは何で他のメイド達は普通の部屋なのに私はお前と一緒なんだ!】
【それは俺がご主人様だからV】
【もういい、お前に聞くだけ無駄だった】
美咲は部屋の隅に小さく座り込み、拓海から離れていた。
テーブルには豪華な料理が並び、二人きり。メイドや家来達もそれぞれの部屋で過ごしている。
【ねぇ、もっとこっちおいでよ?】
【・・・・】
【ご飯冷めちゃうよ?】
【・・・・】
【・・・そういう事されると逆に襲いたくなるんだけど】
【!?///】
美咲はビクッとして立ち上がり、素早く拓海の向かい側の席に座る
【・・・///】
【顔真っ赤だよ、鮎沢】
【うるさい///・・・】
【心配しなくても大丈夫だよ、鮎沢。いきなり襲ったりしないから】
【・・・】
美咲はいまいち信用できないという顔をした。上目遣いでちらっと拓海を見上げると拓海は本当に優しそうな顔をしていた。
【///】
【その顔・・・ダメだって///】
拓海は珍しく照れたような顔をした。
【なっ何がだよ?///】
【赤い顔して上目遣い・・・///俺に襲われたいの?V】
【なっ!?///ち違っ・・・】
拓海は参ったという顔をして前髪をかきあげた。
【あんまり俺を煽らないでねV】
【誰が煽るか!!この変態宇宙人!私は温泉に入ってくる!】
美咲は恥ずかしくて我慢できず温泉に向かう。
【はあ・・・最近碓氷のせいでずっとドキドキしっぱなしだ】
このままでは心臓がもたないと美咲は温泉でゆっくりするつもりだった。
【あら、美咲ちゃん】
【さつきさん?皆さんも今来たんですか?】
【ええ、せっかく温泉に来たんだもの。ゆっくりしたいじゃない】
【この温泉肩凝りにいいらしいわよV】
【そうなんですか】
ワイワイとメイド仲間の人達と温泉に浸かり、美咲は疲れを癒した。
(温泉なんて久しぶり・・・母さん達とも一緒に来たかったな)
ぼんやりと祖国を思い出した。するとさつきが近寄り、美咲の隣で温泉に浸かる。
【美咲ちゃん、やっぱり祖国が恋しい?】
【え・・・さつきさん】
【他国のお姫様なのにメイドなんてしてもらって、ごめんね】
【いえそれに私、もうお姫様なんて・・・メイドをしてるのだって自分で決めた事ですから】
【美咲ちゃん、王子の事、どう思ってる?】
いきなり、さつきは質問した。その質問に美咲はパッと赤くなる。
【なっななな何で!?///】
【だって二人ともお似合いだものV王様達も認めて下さるだろうし、何より王子がご執心だものV】
【///】
【自分の立場とか、気にしないで。自分が本当に王子の事どう思ってるのか・・・よく考えてみて】
【私が・・・王子の事・・・】
美咲は拓海と出会ってからの日々を思い出した。
雅ヶ丘帝国から逃げ出し、何度も拓海に救われた。
拓海に出会わなければ今自分はここにいない。
美咲自身が気付いていない程に拓海の存在は大きかった。
(私はあいつを・・・好きなのか?)
のぼせる程真っ赤になり、美咲はフラフラと部屋に戻った。
【美咲ちゃんお帰りVずいぶん長かったね?】
【んー・・・碓氷・・・】
美咲は水を飲み、ベットに倒れ込む。のぼせているためか体が熱い。
【大丈夫?美咲ちゃん】
【んー熱い・・・】
美咲は羽織っていた上着を脱ぎ、宿の浴衣姿で横になる。
少しはだけた浴衣は美咲の脚のふとももを覗かせていた。
【美咲ちゃん・・・それ誘ってるの?】
【ん?・・・っ!?】
美咲は自分の状態に気付き起き上がって足元を隠した。
【もう勘弁してよね・・・こっちは必死に我慢してるのに・・・】
【我慢?】
拓海のどこか辛そうな表情に美咲はちくりと胸が痛む。
【・・・碓氷】
【なーに?美咲ちゃんV】
【・・・私はお前に助けてもらってばっかだ。お前がいなかったら今私はここにはいない・・・】
美咲はさつきに言われ自分なりに考えた拓海への気持ちに整理を着けようとした。
【お前には本当に感謝してる。・・・ありがとな///】
【!・・・】
照れ臭そうにする美咲に留めの一発を浴びせられた気分だった。
拓海はベットに腰掛け、美咲の髪に指を絡めた。
【本当に・・・ズルイよね、鮎沢】
【何が?】
【どれだけ俺に我慢させたら気が済むの?】
【我慢って、だから何の・・・っ!?】
美咲の唇に拓海の唇が重なった。触れるキスをした後、少し離してまた重なる。
今度は深く、舌が絡まり美咲は息苦しさに耐えられなくなる。
【はっ・・・うす・・・い・・・///】
【鮎沢・・・好きだよ】
【・・・私は】
美咲は赤くなり目が涙で潤んでいた。
喉のすぐ傍まできているこの言葉は言ってしまえばきっと逃げられなくなる。
【私は・・・・・・お前なんか嫌いだ】
美咲は視線を逸らして自分の気持ちを隠した。
それは無意識のうちでつい口をついて出た「嫌い」という言葉。
【ふーん・・・・本当に?】
【うるさい!お前なんか嫌いだって言ってるだろ!///】
美咲はいやいやとかぶりを振り、慌てる。
【鮎沢・・・】
【!?】
慌てる美咲の手を掴み、見つめて来る拓海。どこか悲しく見えるその表情に美咲は目を逸らせなくなる。
【碓氷・・・わっ!?】
グイッと美咲の手を引いて腕に閉じ込める。
【なっ何やってんだよ!?///碓氷!・・・離せよ!///】
美咲は手を突っ張り拓海の胸を押した。体中が熱くなるのがわかる。
こんなに密着されてはその熱が拓海に伝わってしまう。
【やめろ!離せよ!///この変態宇宙人!///】
【・・・・】
ギュ〜と拓海の腕は力を強めていく。苦しい程に抱きしめられ、美咲は震え出す。
【碓氷っ・・・痛い・・・】
【ねぇ・・・答えてよ。俺とこうしてるの、嫌?】
【・・・っ】
美咲はこうして拓海に抱きしめられ、この大きな腕の中にいる事が心地良いと感じた。
【アホ碓氷・・・・】
美咲は拓海の胸を押していた手の力を緩め、ギュッと拓海の浴衣を握った。
【!?・・・本当、素直じゃないよね】
【黙れ変態・・・こ、これが精一杯なんだよ・・・///】
【///・・・鮎沢・・・】
拓海は優しく美咲を抱きしめ、美咲の頭を撫でた。
そしてその髪に口付けた。
【・・・今なんかしたか?】
【さあ、気のせいじゃない?】
この温泉旅行で美咲はずっと赤い顔をしていたとか。
帰りに美咲がさつきや皆から質問攻めにあった事は言うまでもない
【王子との甘い夜を過ごしたんでしょう?VVV】
【過ごしてません!///甘い夜なんてとんでもない!】
美咲は帰りはさすがに馬車に乗り、拓海と二人で馬は避けた。
美咲は真っ赤でさつき達は妄想の世界に浸る。美咲は目の舌に隈を作っていた。
一泊だけの温泉旅行だったが昨夜は拓海が一晩中美咲に抱き着いていたため美咲はよく眠れなかったらしい。
(あいつのせいで全然眠れなかったしかも・・・あいつの匂いが)
体中から染み付いた拓海の匂いがほのかに香る。
それが何故かこそばゆいような気持ちになる。
『美咲ちゃんと同じ匂いだねV』
【///】
今朝拓海に言われた事を思い出し、美咲は何だか悔しいような気分になった。
(あいつと同じ匂い・・・か・・・)
美咲は腕を挙げ、自分の体から香る拓海の匂いを感じた。
【・・・アホ碓氷///】
こうして一行の旅は終わった。
【何だこれは!?///】
【キスマークV美咲ちゃんがうとうとしてた時付けちゃったV】
【ちゃったじゃねぇ!アホ】