深海の忍術
□兄弟 1
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うずまきナルトに兄が居る。
その話が噂になったのは中忍試験が終わってすぐのことだった。
波風ソルト。
名字が四代目火影と同じな為、それが事実なのか誰も知らない。
「ナルト!」
「なーに、サクラちゃん!」
「兄弟がいるって本当なの?」
「へ?初耳だよ?」
「ならどうしてこんな噂が広がってるのよ。」
「それは俺にもわからないってばよ。」
サクラの言葉にそう答えたナルトの表情は驚いたのと同時に何かを思い浮かべたようなそんな顔をしていた。
彼が思い浮かべたのは九尾の化け狐として酷く虐待を受けていた頃のもので、怪我の治療をしてくれた黒い仮面の少年。
顔が全く見えないからどんな人物かわからないけれど優しい手つきや仕草から自分を思ってくれていることは伝わってきた。
「これ以上立ち入らないほうが君の為だよ。」
「誰!?」
「サクラちゃん?」
「今、ナルトも聞こえたでしょ!?」
「何も聞こえなかったけど?」
「そんなはず!」
サクラはキョロキョロと視線を彷徨わせるが、自分達以外は誰もいない。
納得が出来ない彼女は相手を探すべくどこかへと走って行ってしまった。
何が起きたのかさっぱりわからないナルトは頭を傾げていると真横に上から誰かが飛び降りてくる。
「だ、誰だってばよ!?」
「あれ、俺のこと覚えてない?」
「んー見た事ないと思うけど…どっかで会ったか?」
「あ、そっか。これならどう?」
そう言って顔に付けたのは真黒いお面で、昔怪我を治療してくれていた少年の姿を思い出した。
ナルトが見せた表情に気付いた彼はお面を外した青年は紺色の髪に綺麗な蒼の瞳をしており、にっこりと笑みを浮かべている。
すらりとした長身をくの字に曲げてナルトへとしっかり視線を向けた。
「兄ちゃん名前は?」
「俺は波風ソルト。噂になってるんじゃない?」
「そういえばサクラちゃんがそんなようなこと話してたような…。けど俺には兄ちゃんなんていないってばよ?」
「…でも俺の事お兄ちゃんみたいに思ってくれていいよ。」
「そんな急に兄ちゃんとか言われても…。」
「そっか、変な事言ってごめんね。」
「ソルト。」
「我愛羅!?なんでお前が…。」
「ソルトに用があった。それだけだ。」
「何か用?」
「お前の力が居る。」
「俺より我愛羅くんの方が力があると思うけど。」
「兄ちゃん強いのか?」
「そんなことないよ。砂を自在に扱える方がすごいし。」
「あれだけの水氷を扱えるのはお前だけだ。」
「水氷ってなんだってばよ。」
「これだよ。」
そう言って手の中に氷でできた狐を作り、ナルトへと見せれば吃驚したような表情を見せている。
ソルトの手から狐を受け取り、どうやって出したのか気になるらしく彼の手のひらを見ては何度も見比べていた。
「ソルト、行くぞ。」
「我愛羅くんはホントに人遣いが荒いんだから。」
そう言いながら門へと歩いて行った2人にいきなり襲い掛かってきたのは黒いマスクをした忍び達で術を展開してくる。
それに応戦するように瓢箪から出てきた砂によって飛んできたクナイを全て弾き飛ばした。
「ここまで来るなんてしつこい人は嫌われるよ。」
「殺す。」
「殺すなんて物騒だね。俺は殺生とか嫌いなんだけどなぁ。」
そんなことを言っていると、近くにいたナルトを人質にとっていた。
それを見た我愛羅は自分に被害がないようにと砂の防御壁を張れば、彼の手から一気に放出された氷の刃はナルトに触れていた忍びに突き刺さって行く。
ナルトを盾にしていたのだが、氷はナルトに触れると柔らかくなり何も感じさせない為まったく意味がなかった様だ。
蜂の巣状態にされた忍びはその場で崩れ落ち、周りに隠れていた者たちは氷漬けにされている。
ナルトに手を出すなど自殺行為にも程があるのに馬鹿な奴らだと溜息を零しながら砂の防御壁を取り払うと、想像通りの状況に軽く溜息をこぼした。
「すごいってばよ。」
「」