深海の忍術

□強者 1
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サスケが抜けた七班。
基本的にスリーマンセルを主として任務を請け負う為、新しく暗部から1人迎え入れられた。
彼の名はサイ。
感情の起伏がなく、いつも作り笑いをし続けているナルトとは正反対なタイプである。
その上、サスケとの繋がりをバカにしたような物言いにナルトから怒りが見えた。

「お前が仲間なんて、俺は認めねぇ!」

そう彼が宣言したものの、サイから返ってきた言葉は冷たく人を馬鹿にするようなもの。
そんなことがあった後、ナルトが大蛇丸への憎しみから第四の覚醒をしてしまいそれをヤマトによって無理やり鎮められた。
真っ暗な意識世界に現れた緋髪の青年と紅い狼。

「…ナルト。」

そう言って一瞬で消えてしまった彼を追うように目を冷ませば、心配そうな顔をしたサクラとヤマトが目に映った。

「敵さんのお出ましかな?」

「!!」

気配に気付きクナイを構えるサクラ。
その緊張感の中現れたのは、ヤマトと同じくらいの背丈をした緋髪の青年と紅く立派な毛並みをした狼。
先程の夢で見た彼と同じ容姿に、ナルトは目を見開いた。
青年はナルト以外に興味がないのか、ヤマトとサクラが向ける殺気とクナイにも動じていない。

「暁か。」

「やっぱりこの格好だとバレちゃうね。」

「何の用かな?用がないならお引き取り願いたいんだが。」

「えー、用ぐらいちゃんとあるからそんな冷たいこと言わないで下さいよ。ヤマト先輩?」

「その呼び方は止めてくれないか。俺はもうお前の先輩じゃない。」

「あらら、嫌われちゃったみたい。ナルトぉ慰めて?」

「は?お前、誰だってばよ。」

「ウソ、俺の事覚えてないの?うわーマジでヘコむわ。」

そんなことを言いながら泣いたふりをする彼だったが、いきなりクナイを構えると同時に何の気配もしない茂みへと投げた。

「酷い挨拶の仕方だな。」

いきなりの攻撃で茂みから出てきたのは同じく暁の衣を羽織った紅髪の青年で。
大いに見覚えのあるその姿にサクラは驚きで目を見開いている。
あの時、チヨバアと一緒に倒したはずのサソリ。
後ろにはぞろぞろと傀儡を連れ、投げ付けられたクナイを手に薄く笑みを浮かべている。

「(暁が二人…サソリは何とかなったとしてもアイツは今の俺達には倒せない。どうにか二人だけでも逃がせればいいんだが。)」

「…おい、逃げようなんて考えんじゃねーぞ?別にお前らに攻撃するつもりなんざねーし。」

「そんな戯れ言、信じると思うのかい?」

「あ゛?俺が嘘つきだって言いてえのか?」

「サソリ。何しにきたわけ?用がないなら邪魔しないでよ。」

「…っ、棺に用があるから来たに決まってんだろ!」

「だったらいちいち喧嘩売らない。」

「棺?」

「あーそっか。ヤマト先輩はこっちの名前知らないんでしたね。」

「お前のランクがやけに高い理由が今わかったよ。木の葉の犬塚一族からの抜け忍、というだけではないんだね。」

ヤマトの言葉が終わると同時に消えた棺と呼ばれた彼、気付けばナルトの首にクナイを当てながら耳元に口を寄せていた。

「ナルト、あんまり感情的になり過ぎたらダメだよ。あと、無理は絶対しないこと。いいね?」

「は?」

いきなり自分を心配する声にナルトは困惑し、話の内容がわからないヤマトとサクラはクナイを構えながら彼の動きを見ている。

「お前は何が目的なんだい?」

「もち、ナルト。」

「やっぱり九尾の…。」

「…サソリ、暫くナルトの護衛を宜しくね。」

「ガキのお守りは嫌いだ。」

「ん?何か言ったかな。」

ナルトを抱き込んでいたはずの彼は瞬時にサソリの目の前に仁王立ちすると、笑みを浮かべる。
サソリは顔を引き吊らせながらぶんぶんと頭を横に振れば、満足したのか。
その場から消えていった。

「まあ、そう言うことだ。お前らの任務の邪魔をする気はねーし、手伝う気もねーよ。ナルトに手出す奴は殺る、それだけだ。」

そう宣言した彼と行動し始めてすでに三時間が経過しているが、これと言って不振な動きもない。
初めこそ警戒心があったナルトだが、次第に心を開いたのか。
彼と会話する事が多々あった。

「なぁ、サソリ。」

「あ?」

「サソリはサクラちゃんとバアちゃんに…。」

「俺がそんなザコに殺られるわけねーだろ。暁から抜けるのに丁度良かったから使わせてもらっただけだ。」

「暁から抜ける?」

「棺がそろそろ潮時だとさ。ま、俺は尾獣だの人柱力だの興味ねーからどうでもいい。」

「だったら何で暁なんかに入ったんだってばよ。」

「それは棺が…。」

「二人で何の話してるの?俺も仲間にいーれーて。」

「棺?いつの間に…。」

「今さっきだよ。暁って陰険な人ばっかり集まってるからホント萎えるよ。と、まぁそれは置いといて大蛇丸のアジトに忍び込んで何するつもりかな?」

「やっぱり来たね。」

「サイ!」

「そちらのお二人は暁ですか。」

「見ての通りだ。まぁ、俺らは居ないもんだと思って殺ってくれ。」

我関せずの態度を取るサソリと、狼に腰掛けながらクナイを弄ぶ棺を見たサイはナルトに戦いを挑んだ。
互角かそれ以上の力を見せたナルトの想いがサイにも影響があったらしく、再び行動を共にすることとなった。
サスケのいる場所まで駆け抜け、そこには修行をしてまでずっと探し求めていた彼の姿がある。

「ナルト…とサクラか。それに暁の連中?」

「へえ?君がイタチの弟なんだ。兄弟揃ってホントの屑だとは思わなかったよ。」

「あんな奴と一緒にするんじゃねぇよ。」

幾分低くなった声が部屋に響き渡り、棺とサソリ以外はその殺気にビクッと身体を動かした。
サスケがいきなり仕掛けた攻撃を意図も簡単に弾き返したのは、今までずっと大人しくしていた紅い狼で、牙を剥き出しなしながら唸っている。

「火丸、そいつは俺が殺る。棺と下がってろ。」

「グルルル。」

「威嚇してんじゃねーよ。」

サスケをどちらが殺るか、それだけで喧嘩を始める二人を横目に棺は軽く溜め息を零した。
ナルト、サクラ、ヤマトは呆れ顔で笑っているサイからは感情が読み取れない。

「うちはサスケ。君の復讐に何か意味があるの?イタチを殺ったところで一族が甦るわけでも名誉が戻るわけもないのに。そこが俺には理解できないね。」

「テメェにはわかんねーよ。」

「ふーん?じゃあ俺に殺られちゃおうよ。君が居ると後々面倒だからね。」

そう言うと同時に左目は一瞬のうちに漆黒に金色の瞳孔へと変化していった。
中心には黒く「王」と象られている。

「その眼…。」

「黒王眼だね。」

「こくおうがん、って何だってばよ?」

「闇の王にのみ受け継がれる眼。どの血継限界より勝ると巻物に書かれていたけど、実際に見るのは初めてだ。」

「黒王眼だろうが、俺の邪魔をする奴は消す。」

「そう、じゃあ遠慮はイラナイね?」

棺の漆黒のチャクラが身体を包み込むように溢れだし、それに反応して火丸と呼ばれた狼も漆黒に染まっていく。
濃縮したチャクラを身に纏うことで化け物と化していた。

「死ね。」

彼が呟くと同時に火丸がサスケの腹に噛み付き、肉を抉る。
あまりの速さに反応出来なかったサスケはモロに食らってしまったらしく、吐血しながら地面に叩き付けられた。
その状況に焦ったナルトが棺の前に立ちはだかり、その姿を見る彼の表情は初めて会ったときから見せていた優しい笑みが消え、無表情のままクナイを握りこむ。
抉られた皮膚から黒い血がポタポタと地面に零れ落ちた。

「口寄せ、常闇。」

血の中から現れたそれは、建物を壊し巨大化していくとその頭角を表した。
名の通り、暗く深い闇に包まれた得たいの知れない何か。
込み上げてくる恐怖を必死に抑え込んで、ナルトは印を結んだ。
螺旋丸。
彼の技の中で一番威力の高いそれを得たいの知れない何かに放ってみるも、触れたという感触の無いまま吸収されてしまった。
そして、ナルトの身体をも取り込むと満足したのか。
小さくなって消えていく。

「ナルトの回収、サスケへの挨拶も終了だね。サソリ、一旦戻るよ?」

「わかった。」

「ナルトは俺がちゃんと守るから心配しないでね?」

そう宣言して消えていく彼らを止めることも出来ず、ただただ悔しげに拳を強く握り込むのだった。
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