深海の侍人
□忍び 1
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天人の侵略により、攘夷戦争が始まったが力の差など歴然。
どれだけ倒しても次々と湧いてくる敵に、1人また1人と倒れていった。
「…少々厳しいな。」
「少々どころじゃねえだろ。」
「そうだな。ん?あそこに居る奴は何をしているんだ?」
桂が指で示した先には死体の山を物色する姿が見え、血だらけの刀や金目の物など漁っているようで沢山背負われている。
「なんて罰当たりな…。」
「何してんの、お前。」
銀時の呆れた声に反応して振り返ったのは漆黒の髪に血の様に赤い目をした少年で、口元は黒い布で覆われめんどくさそうに立ち上がった。
「死体を漁るとはいい度胸だな。」
「死んだ人間に刀も金目の物も必要ない。」
「お前は何に使うつもりなんだ?」
銀時のその言葉ではなく、何かの音に反応した彼は辺りを見渡したかと思うといきなり木の上に飛び乗る。
鋭い視線で遠くを見渡し、戦火の上がる方向を確かめると同時にそこへ向かって走り出してしまう。
銀時と桂もそこへ向かう途中であった事もあり、同じように走り出せば血と皮膚の焦げた臭いが充満した焼け野原が見えた。
彼はといえば、50m程先に立っている天人の指揮官であろう男を見据え、腰に差していた綺麗な黒い刀身の小刀を抜く。
死体を漁るただのガキだと思っていた銀時と桂にとって刀を使えるということ自体、驚きの事実である。
それどころか、指揮官の周りにいる天人を一瞬で片付け冷たい視線のまま恐怖に慄く指揮官の首を刎ねてしまった。
容赦など全くない。
「…お前何者だ。」
「何者?」
「どこの隊に所属しているのか聞いているのだ。」
「蒼。こんな所に居やがったか。」
「?」
「全く、勝手に死体漁ってんじゃねえよ。」
「知り合いか?」
「あぁ。こいつは俺のだ。」
「俺の?」
「また新しい敵が来る。結構大きい戦艦。」
「…これは無理だろ。」
「壊す?」
「行けるか?」
「高杉様の命令とあればなんでも出来るよ。」
「じゃあ行け。」
その言葉と同時に彼の残像が消えていったかと思うと段々と近付いてきていたはずの巨大戦艦が大きな爆発音とともに墜落している。
ほんの数秒の間に何をしたのかわからないが、先程と同じ場所に蒼の姿が現れた。
「終わったよ。」
「相変わらず早いな。」
「次々と来てるから意味ないけど。ほらまた来た。」
「…本当にすぐ現れるな。」
「天人ってそういうもんだよ。ゴキブリみたいな生命力を持ってる上に戦闘技術も上じゃ太刀打ちできないね。」
「…ッチ。」
「このまま戦い続けても終わりは見えてるという事か。」
「この戦争は人間が負けるよ。でもこれ持って一番デカいの落としたら恐怖くらい持ってもらえるよね。」
そう言った蒼の手には巨大な爆弾が持たれており、にんまりと笑みを浮かべている。
しかし、その爆弾を見た皆の表情が固まった。
それもそのはず。
この爆弾は自爆するためのものであり、死にに行くといっているのと同意義なのだ。
「蒼!」
「高杉様、俺の一生一大の晴れ姿。楽しんでよ。」
そう言うと止める高杉の声を振り切り一番大きな天人の戦闘機へと向かっていくと、しばらくすると凄い爆発音と共に全てを巻き込んで墜落していくのだった。