深海の侍人
□剣豪
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相沢夕凪。
攘夷戦争での活躍から伝説の剣豪と呼ばれていたと聞く。
しかし、彼は攘夷戦争後その行方がわからなくなっていた。
そんな彼が万事屋を訪ねてきたのは新八に神楽、定春がやってきてから数日経った頃で血だらけの身体を引きずりなんとか立っているような状態だった。
玄関先を真っ赤に染め、とりあえず気休め程度のタオルを引いたソファーに寝かせて着物の前を開いてみれば、胸から下腹部にかけて深い刀傷。
他にもないかと調べてみれば、腕や足など身体中に刀傷があり病院に連れて行かないと無理かと溜息を零した。
「…それにしても出血が酷過ぎるな。」
「ぎ、ん…とき…。」
「んあ?」
「…っ。」
「病院行くぞ。」
酷く痛み始めた身体は高熱を持っている。
すぐさま救急車を呼べば、あまりの騒がしさにお登勢が外へと出てきた。
目の前には救急車が来ていて担架を2階の万事屋へと急いで運んでいるのを見ると何かあったのだろう。
溜息を零しながら2階へと続く階段に目をやるとぼとぼとと大きな血だまり。
それを見るだけで大事であるのはわかり、担架に乗せられてくる者が誰か確認するためしばらく外に居ることにしたらしい。
やっと降りてきた担架に乗せられているのはお登勢が知っている万事屋の誰でもなく、酸素マスクを付けられた青年は金色の髪をしている。
キツく閉じられた瞳、そして辛そうに眉間に皺を寄せていた。
すぐさま病院に運ばれ、ICUに入れられた彼だったが輸血を数日していたことで顔色の悪さは軽減され1ヶ月もしないうちに退院している。
「ったく。あの時は銀さんマジでびびったんだからね?」
「いやー、久しぶりに受けた依頼で刀持ったんだけど相当鈍ってた。」
「鈍りすぎだろ。」
「そりゃ、最近持つことなかったし…仕方なくない?」
「それは言い訳だろ。」
「ハイハイ。どーせ俺は弱いですよーだ。」
「…はあ。で?血だらけで俺のとこ来たんだ、なんか用があるんだろ?」
「俺の事雇ってくれないかなーって思って。」
「お前あの状態でそんなこと思ってたのかよ。」
「うん。薄れゆく意識の中なんとかこれを伝えようと思ったんだけど、名前だけで精一杯だった。」
「お前はホント変わんねえな。」
「照れるじゃん。」
「褒めてねえよ!!」
「え?そうなの?」
「当たり前だろ。」
「で?雇ってくれる?」
「まぁ、雇ってやらねえこともないけど刀の腕鈍ってんだろ?危ない仕事もあるから銀さん心配だな〜。」
「それは俺も心配…でもま、そのうち感覚取り戻すでしょ。」
「相変わらず楽観的だな。」
「楽観的に考えなきゃ生きていけないよ、このご時世。」
「それであの怪我かよ。」
「そうなんだよね。」