深海の侍人

□黒虎
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攘夷戦争から10年という月日が経った今では天人達が我が物顔で、江戸の町を歩いている。
そんな世の中の流れに身を任せるものの多いこのご時世。
武装警察である新撰組鬼の副長こと土方は今日も街の秩序を守るべくパトロールをしていた。

「お前が持ってんのは刀じゃねえか?」

「…だから?」

「あ゛?舐めてんのか、テメェ!」

「瞳孔開きっぱなしとか気持ち悪いよ。」

「叩っ斬る!」

いきなり鞘から抜かれた刀は虎の面をつけた彼へと斬りつけられる。
しかし、意図も簡単に避けられ逃走を図る彼を怒鳴り声を上げながら追いかけていく。
やっと追いついたのは薄暗い路地裏で少し息を弾ませながら逃げた男を見据えた。

「もう逃げられねえぜ?」

「そうみたいだー。」

諦めたのかと思いきや、一瞬で土方の後ろに回り込み刀を振り下ろしていた。
彼の背中から鮮血が飛び散り、地面に崩れ落ちる。

「てめ…何者だ………?」

「通行人T?」

止めを刺すために振り下ろされた刀だったが、銀髪の男によって防がれた。

「…銀時?」

「よォ、虎之助。お前が警察殺しとはなァ?」

「この人しつこくてさ。天人だったら即殺ってた。」

「おーい、多串ィ?…ッチ、意識失ってやがるか。」

「動脈ギリギリを斬ったからねー。初日からこんなんじゃ先が思いやられるよ。」

「お前江戸に住む気じゃないだろうな?」

「住む気はあんまりないけど、こっちにも色々事情があってさー?しばらく新撰組を見張るよーに言われてるんだ。」

「おま、新撰組見張るつもりならコイツ攻撃しちゃ駄目だろ!」

「なんで?」

「あれでも一応、新撰組の副長だぞ?」

「…まじ?あんなに弱いのに副長?」

「お前と比べんな。つか気付いてなかったのかよ!?隊服見ろ、簡単にわかるだろうが。」

「あー、言われてみればそうだね。今さら取り返しつかないし、銀時死ねよ?お前殺ってこれ埋めたら完全犯罪だよね。」

「…っ、ちょテメエ本気で振ってくんじゃねーよ!」

虎之助から繰り出される隙のない攻撃をなんとか受け止めながら、銀時は後退りをしている。
だからこいつは嫌いなんだと小さく愚痴を零しながら彼を睨みつけた。

「何をしている!」

「…っち。銀時、ささっと失せろ?お前がいると厄介。」

「んーだとコラ。」

「ここで殺られたい?」

虎之助の凄まじい殺気に圧された銀時は頭を掻きながらその場を後にするのだった。
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