深海の色々
□BLACK LAGOON 1
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ラグーン商会は社長であるダッチ、トゥーハンドの異名を持つレヴィ、会社に見捨てられたことがきっかけで本名を捨てたロック、ウィザード級のハッカーであるベニーの4人で活動している。
今日もまたクライアントからの依頼を終え、ブラックラグーン号で街へと向かっていたその時。
黒い煙を上げ今にも沈没しそうな戦艦が見えた。
爆発音が何度も鳴り響き、離れているはずにも関わらず火の勢いを感じるほどだ。
どこの戦艦だと甲板へ出ていけば黒いコートに身を包んだ人間が戦艦から飛び降りてくる。
かなりの高さと距離があったが何事もなかったかのように立ち上がった。
「テメエ誰だよ。」
レヴィの冷たい声が響き、それに反応してコートを脱ぐと同時に見えたのは輝くほどの金髪と透明感のある白い肌。
まだまだ幼く見える顔つきだが、レヴィが構えている銃には全く反応を見せない。
警告を込めて頬ギリギリに打てば、その銃声を聞きつけてダッチとベニーが出てきた。
「レヴィ、何やって…。」
「ダッチ、ベニー久しぶりだね。」
「時間通りだな。」
「え?二人共知り合い?」
「知り合いというより、ラグーン商会の社員だ。」
「俺はルカ。よろしくね〜。」
「あ、俺はロックです。」
「ダッチから聞いてるよ。あーそろそろ銃おろしてもらえないかな。」
「レヴィ。」
「うっせーな、わかったよ。おろしゃいいんだろ。」
「ダッチ、ここから離れたほうがいいよ。そろそろあれ限界だろうし。」
「みたいだな。報酬はもらったのか?」
「たっぷりいただきました。部品調達もいろいろ出来たから船の手直ししないとね。」
「最近動力に問題が…。」
ダッチとルカと名乗った青年は親しい関係のようで船内に入りながら盛り上がっている。
それに続いて3人も中へと入った。
「レヴィは知らないのにベニーは知ってるってどういうこと?」
「ルカは船にしか顔を出さないからね。それに基本的に一匹狼みたい。」
「それは聞き捨てならないな〜。俺どっちかというとみんなでワイワイ楽しくやるほうが好きなんだよ。なのにダッチが俺一人で行けって。」
「俺が言ってるんじゃねえよ。クライアントの指示だ。」
「はいはい。そういえばこれ、探してたんだよね?」
「そ、それ僕がずっと探してたパーツ!」
「たまたま今回の仕事で見つけたんだ。頑張ってるベニーにご褒美〜なんてね。」
「ありがとう!」
「俺にはないのか?」
「んー新しく作られてる高性能ライフルとかそんなんしかないなー。今回のところはガセネタが多い上に偽物ばっかだったから。あ!これどーよ、政府が極秘開発してたMPP283。魚雷戦艦にはもってこいの武器だと思って拝借してきたんだ。」
ルカが写真を見せると同時にいきなり船が傾き、大きく揺れる。
レーダーには反応が全くない状態にも関わらず攻撃されているようだ。
それは海上からではなく海底から狙われているらしく、下からの襲撃ばかり。
すぐさま全速力でその場から離れるが、今度は上空が戦闘機によって囲まれている状態。
無線で甲板に出るようにと戦闘機から指示がある。
どうしたものかと考えているダッチの肩にぽんっと手を置き今しがた出した高性能ライフル片手に甲板へと出て行く彼。
それと同時に聞こえる銃声。
戦闘機が次々と真っ赤な炎と黒い煙を上げながら海へと墜落していった。
「…すごい。」
「ダッチ、あいつ何者だよ。」
「スモーキングガンつったら聞いたことぐらいあんだろ。」
「…スモーキングガン?」
「片手であのライフルの命中率、それで納得だぜ。」
「終わったよー。やっぱり高性能ライフルはいいね、戦闘機の機体にもちゃんと届いてる。」
「相変わらずの腕前だな。」
「いやいや、結構腕訛ってるよ。最近ライフルよりイーグルばっかだし、このままじゃ俺の仕事なくなりそう…。」
「どうしたんだ?お前が悲観的になるなんて珍しいじゃねえか。」
「さっきの戦闘機、エンジンの動力部だけ狙って撃ったつもりだったのに貫通した。腕鈍りすぎ。」
「お前本当にかの有名なスモーキングガンなのかよ。」
「まあ一応ね。」
「一応だと?アタシはそういうのくそムカつくんだよ。」
いきなり歪な表情になったレヴィが撃った弾によって肩から出血するルカ。
しかし全く痛がる様子もなく、冷たい表情のまま彼女を静かに見据えているその姿は恐れなど皆無でライフルをくるくると回したかと思うとレヴィに向かって一発放てば彼女の手から銃が奪われルカの手中へと誘われるように飛んでいった。
「はい、おしまい。君は俺には勝てないし、弾の無駄遣いだよ。」
「レヴィ、気は済んだか?」
「ダッチ、酷い。俺こんなに怪我したのに〜。」
「それは自業自得だろーが。」
「どーせ俺が全部悪いんですよーだ。はい、これ返すね。」
「あ、あぁ。」
「本当にルカさんは…。」
「ルカでいいよ。仲良くしようね?」
人を平気で殺しているようには見えない優しい笑みを浮かべている。
そんなことを言いながら服を脱ぎ捨てて流血している肩にガーゼを当てて包帯をまこうとするとダッチが手伝うらしく丁寧に巻いていった。
「ありがとう。よし、もうすぐ街につくよね?ならそろそろ船の改造始めようかな。」
そう言ってエンジンルームへと潜っていく姿は怪我をしているようには見えない。
しばらくして街につくと皆事務所へと帰っていく。
しかし、ルカは行くつもりがないらしく持ってきていたカバンからノートパソコンを出したかと思うとブラックラグーン号の設計図を開いてあちこちを外し始めた。
10分もすると骨組みだけになり、それを器用に新しい部品と組み合わせて取り付けていく。
包帯ににじみ出ている赤など全く気にならないようだ。
「ルカに届けものだよ。これ何に使うんだい?」
「ベニーありがとう。これは君の機材に付けるんだよ。あのままでもいいんだけど新しい戦艦が出てきてるから更新しないと潜水艇とか対応できないし。」
「やっぱりレーダーをかいくぐるような装備が付いてる戦艦が増えてるんだね。」
「うん、それが標準装備になりつつあるから気をつけないと。」
「そんなに進んでるのか。もう少し政府の情報を集めたほうがいいみたいだ。」
「俺もそれなりに集めてはいるけどベニーの方がそういう能力に長けてるから。」
そういった彼は次々と組み立てていくとある程度原型ができたと同時に薄汚れた部分を丁寧にヤスリで磨きペンキで色を塗っていく。
綺麗に出来上がったそのボディは先日の依頼でボロボロになったそれとは思えないほどである。
外装の修理が終わると疲れたのだろう、甲板の上で爆睡している。
顔中にペンキやオイル汚れを付けたまますうすうと寝息をたてていた。
「ルカ、こんなとこで寝たら風邪引くぞ。」
「…んぅ。」
「しょうがねえな。」
ダッチは軽々と持ち上げて船内のベッドへと寝かせれば、気持ちよさそうにごろんと寝返る。
彼自身も大きな欠伸をして椅子の背もたれに身体を預けて眠りにつくのだった。