深海の色々

□天体戦士サンレッド 1
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天体戦士サンレッド。
ヒーローである彼だがその実態は社会不適合者と呼ばれ、彼女であるかよこのヒモだ。
そのため、横暴な態度を取るもかよこには頭が上がらない彼だが、彼女にすら言っていない秘密がある。
それは…。

「あーてめ、なんでこっちの高校にしたんだよ。」

「寮暮らしなら兄ちゃんの近くにって言われたから。」

「家から通える学校にすれば良いだろうが!」

「ま、過ぎた事は気にしない。」

「っち。」

大きな舌打ちをしながらもひと回り下の弟である彼の大荷物を持って寮へと入っていく。
新築と言うだけあって綺麗な上に部屋は一人一人別々の暮らしでユニットバス付き。
小さなキッチンと冷蔵庫に洗濯機、小さなTVが有りビジネスホテル並の設備だ。

「意外と住みやすそうだな。」

「それで選んだからねー。」

「自炊すんのか?」

「食堂あるからそこで食べるよ。」

「へえ。」

そんな話をしながら片付けを手伝っていると箱の中から出てきた彼のバトルスーツ。
その横には最終形態のスノーウルフがあり、靴の箱にしまわれている。

「おま、よくこんな小さいのに入れられたな。」

「使わないのにデカイから邪魔でさ。無理やり詰め込んだ。」

そんなことを言いながら徐ろに空色のマスクを外せばふわふわの茶色の髪と整った顔が現れる。
兄弟ということはレッド自身もイケメンと呼ばれる部類であろう。

「おま、何マスク外してんだよ!」

「学校マスク禁止。」

「なんでそんな学校…。」

「外す言い訳が出来るから。やっぱ素顔が一番!気持ちいいー。」

「はぁ…相変わらず脳天気だな。」

「兄ちゃんにだけは言われたくないし。」

わざとらしく大きな溜息をつきながら片付けの終わった部屋を見渡し、全ての確認を終えるとレッドを連れて近くのファミレスへ。
中へ入りメニューを広げれば、季節限定のメニューが多数ありお互いに目移りしながら選んでいる。

「あ、レッドさんこんにちは。」

「よぉ。」

「お友達ですか?」

「いや?」

「俺レッドの弟でアオっていいます!」

「私は悪の組織フロシャイム神奈川支部のバンプと申します。レッドさん、弟さんがいらっしゃったんですね。」

「あぁ。」

「アオさんはヒーローではないのですか?」

「ヒーローは辞めた。俺の目標は普通の高校生!」

そんな事を言いながらニッコリと笑みを浮かべたアオだったが、次々と現れたフロシャイムの怪人たちに鋭い目つきに変わっていく。
やはり正義の血が騒ぐようで、他県からやってきていた怪人が兄であるレッドに対決を挑むや否や一発KOしてしまった。
その強さは兄をも凌ぎ、彼と違って優しさなど微塵もない。
徹底的にボコボコにしてもなお蹴り続けるその姿に、バンプの表情が固まっている。
以前レッドの部屋で恐怖を覚えた例の彼らの様で、冷や汗がだらだらと流れていた。

「そろそろやめとけ。」

「え、なんで?俺に喧嘩売ったんだから覚悟はできてるでしょ。」

「お前にじゃなくて俺にだろうが。」

「兄ちゃんに喧嘩売るってことは俺に喧嘩売るのと同意義だよ。」

「お前、マスク外してるの忘れてねえだろうな?」

「忘れてないけど?」

「普通の高校生はフロシャイムの怪人と戦ったりしねえ。」

「…え、そうなの!?」

「そこ驚くとこですか!!」

「皆隠れて怪人と戦ってるんじゃないの?」

「なわけねえだろ。」

「…そうだったんだ。俺てっきり。」

「お前相変わらず馬鹿だな。」

「うるさーい!…ショックが大きすぎて立ち直れないかも。」

項垂れながら椅子に腰掛け、悲しそうな表情をするアオを可哀そうに思ったのか。
レッドが大きな手で彼のふわふわの髪の毛を乱雑に撫でる。

「むぅ…。」

「そうむくれるな。お前が思ってるのとは違ったかもしれねえが、普通の高校生活はこれからだろ?」

「…そうだね!」

「言っておくが、お前が怪人を倒せる様な力は普通の高校生に備わってないからな?」

「嘘…。」

「本当だ。絶対に本気で体育競技やるんじゃないぞ?大変なことになる…。」

「本気じゃなきゃいいんだね。例えばこれくらいの力とか。」

そう言って彼が倒れていた怪人を片手で掴みあげる。
その力でぶんと投げ飛ばそうとしたアオを慌てて止めたレッド。
こんな力を学校で使ってしまったら怪人だから無事に済むが、人間の子供などひとたまりもない。

「おま、そんな力人間に使ったらひとたまりもないぞ!もっと制御しろ。」

「むぅぅ…。」

「良いか。優しく、優しくだ。」

「優しく…ってどんな感じ?」

「お前、マシュマロ好きだろ。あれ持つときと同じ感じだな。」

「なるほど!マシュマロ強くもったら潰れちゃうもんね。学校のみんなをマシュマロだと思えば良いわけだ。」

「まあ身体の作り的にはな。」

「わかった!兄ちゃんはやっぱりすごい。」

「すごかねぇーけど。」

「尊敬してるし、大好き!」

レッドに抱き着くと満足そうに頬ずりを繰り返している。
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