Long Novel

□U
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「明日、早いんじゃなかった?」

「別に大丈夫だ。 それより……」

お兄ちゃんは、雑誌から顔を上げて私の手元にジロリと目線を移した。

「あ、これね。 なんか家のドアノブに掛かってたんだけど…」

私はその場に座って、紙袋の中身を確認しようとする。


「…それ、幕之内からだぞ」


瞬間。 その言葉に、ドキッと胸が高鳴った。

「え? ま、幕之内さんからって…」

どういう事だろう。
わざわざ、彼が家まで持ってきてくれたという事だろうか?

緊張した指でそっと紙袋を開けてみると、そこには綺麗にラッピングされた袋が入っていた。

そして、それを丁寧に開封すると…。


「あ……」



中からは少し大きめの、可愛らしい羊のぬいぐるみが出てきたではないか。

そっと両手で取り出すと、手触りがふわふわしていて心地好い。

……幕之内さんからの、初めてのプレゼントだ。


「なんだよそれは。 夜にわざわざ渡しに来たから何かと思えば…ぬいぐるみかよ」

「幕之内さん、家に来てくれたの?」

「…あぁ。 お前に渡しといて下さいって言われたんだが、俺は断ってやった。
そしたらドアノブに掛けておきますってな。
どうやら、どうしても今日渡したかったらしい」


羊を優しく抱きかかえながら、紙袋の中を覗くと小さなメモが入っていた。

そっとそれを取り出して、読んでみる。



『久美さんへ

どうしても今日、渡したかったのですみません。
バレンタインデーのお返しです。

喜んで頂けると、幸いです。

それと今度お食事をする時に、大事なお話があります。
また、お電話します。

幕之内』



読み終わった後、激しい鼓動が収まらなかった。

大事な話…とは、一体何なのか。
期待と不安が入り混じって、ソワソワしてしまう。


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