Long Novel

□U
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ピッと受話器の通話ボタンを切り、肩を落としながらため息をつく。

受話器を置きながら、私は考えていた。
どうして幕之内さんは、いきなり明日会おうと言ってきたのだろう?

明日は、3月14日…。



「あっ」


すっかり忘れていた。 明日は、ホワイトデーだ。

先月のバレンタインデーに、私は幕之内さんにマフラーをプレゼントしていた。 義理では無い…と一言言って。

しかしあれから私達の関係は何か変わった訳でも無く、そのまま一ヶ月が過ぎようとしている。

もしかしたら明日、幕之内さんはそのお返しをしてくれるつもりだったのかもしれない…。

ますます、申し訳無く思ってしまう。
それと共に、非常に残念な気持ちも込み上げてくる。

「幕之内さん…」

私は小さく彼の名前を呟き、赤い丸のついたカレンダーを見つめていた。



―――



次の日。

お兄ちゃんの祝勝会も無事に終わり、日も暮れそうになった頃、私は夜勤へと向かおうとしていた。

普段はこんな時間に出勤する事は無いのだが、今日は人手が足りないからという理由で、何人かが夜勤に回る事になっていたのだ。


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