Long Novel
□U
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「え…?」
「おら、受け取れよ」
その言葉を聞きつつ、怖ず怖ずと袋を受け取る。
そっと中身を見てみると、中には…小さなケーキが。
「さっき、たまたまコンビニ寄ったからな。
……仕事の合間にでも食え。 あと…」
するとお兄ちゃんは何か言い難そうに目を逸らしていたが、小さく息を吸うとボソリと呟いた。
「夜勤、頑張れよ」
それだけ言うとお兄ちゃんは背中を向けて、リビングへ歩いて行く。
一瞬、聞き間違えたのかと思った。
だが今…、お兄ちゃんは確かに頑張れと言った。
あのお兄ちゃんがこんな事を言うなんて、どういう風の吹き回しだろう。
それにケーキを買ってきてくれるだなんて。 一体どうして…。
(…あ、そうかっ!)
これはきっと、バレンタインデーのお返しなのだ。
何も言わないので分かり難かったが…。
お兄ちゃんの後ろ姿を見つめながら、私はふっと微笑む。
「ありがとうっ!
夜勤頑張って来るね!」
本当に素直じゃないのだから。 お返しだって一言言ってくれればいいのに…。
まぁ、そこがお兄ちゃんらしいと言えばらしいけれど。
そんな事を思いながら、私は頬を緩ませ家を後にしたのだった。
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