Long Novel
□V
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俺はため息をつき、やれやれと腰を下ろす。
しばらくぼーっとテレビを見ながら、茶を飲む。
俺があいつら二人の為に力を貸すなんて、本当に嫌な気分だ。
もう、二度としない。
(ん……まてよ)
湯呑みを置いて考える。
久美は今、幕之内の家に向かっている。
その時、もし家にあいつ以外誰もいなかったら、あいつは久美を家に上げてそのまま…。
(っ!?)
勢いよく立ち上がった拍子に、ガタンッと湯呑みが倒れたが気にしない。
(そこまで考えていなかった!)
これは、マズイ。
緊急事態だ。
久美を迎えに外へ出ようと、慌ててコートを手に取る。
(幕之内…久美に手を出してみろ…!
そん時は、死刑じゃすまないぞ!)
コートを着ようとしたその時、ガチャリとドアの開く音がした。
どうやら、久美が帰ってきたようだ。
コートを置き、俺は何事も無かったかのように急いで湯呑みを拾って、雑巾で床を拭き始める。
「ただいま」
「おぅ」
ちらりと久美の方を見ると、紙袋は持っていない。
…渡せたのだろうか。
「あれ?どうしたの、床なんか拭いて」
「ちょっと零しちまっただけだよ」
久美は少し不思議そうに俺を見たような気がしたが、すぐに笑顔になり。
「急いで晩御飯作るね!」
軽い足取りで台所へ向かった。
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