Long Novel

□V
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「きゃ〜!寝坊した!仕事間に合わないよ!」

バタバタとした物音で目が覚める。
うるさいな、と襖を開けると、丁度久美が鞄を持って外にでる所だった。

「朝ごはん勝手に食べて! あと、今日夕方には帰るから!」

「あぁ」

「じゃ、行ってきます!」

飛び出して出ていく背中を見送りながら、ため息をつく。
朝から騒々しい奴だ。


そんな日が数日続いた。


今だに久美は、毎晩編み物をやっているらしい。
そりゃあ、あんな時間まで起きてると寝坊をするのも当たり前だろう。

そんな事を思った、ある日の晩飯の時間。

「も〜今日も危なかったよ〜。もうちょっとで怒られるとこだった」

苦笑いする久美をちらりと横目で見ながら、俺は何気なく聞いてみることにした。

「そりゃあ、あんな時間まで起きてたら普通寝坊するだろ…。
しっかし、そんなに楽しいのか?
その編み物ってやつは」

「えっ」

すると、久美は驚きの声を上げる。
その表情を見てみると、顔を赤くして少し動揺しているようだ。
一瞬俺と目が合った久美は、慌てて目を逸らす。

「…お、お兄ちゃんには関係ない」

どうやら、地雷を踏んでしまったらしい。

(こいつがこんな風に反応するって事は…)


…幕之内絡みだ、絶対。


「そうかよ」

急に冷めた気分になり、冷たく言葉を投げ捨てる。

(ちっ、あいつの為に毎晩毎晩徹夜までして、編み物なんぞしてたのか)

…胸糞悪い。



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