Long Novel

□U
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White Day U
Side 久美



3月13日の夜。

私が一人家でぱらぱらと雑誌を読んでいると、突然電話が鳴り響いた。

こんな時間に誰だろう?

不思議に思いながらも雑誌を置き、急いで電話に出ると…。



「はい、間柴です」

「…く、久美さんですか?」


誰だか、直ぐに分かった。

この優しい声は…幕之内さんだ。
彼の方から電話を掛けてくるなんて、珍しい。

キュッと受話器を握りつつ、次第に自分の鼓動が速くなるのを感じていた。


「はい、久美です。…幕之内さんですか?」

「はっはい! …あ、あのですね!」

こうして幕之内さんと電話をするのは、久しぶりだ。
思えばバレンタインデー以降、話すのも久しぶりな気がする。

なんだろう…、一体何の用事だろうか。

すると彼は一呼吸置くと、震える声で言った。


「突然なんですが…。
あの、明日…会えないでしょうか? 久美さんの都合のいい時間でいいんですけど」

「明日ですか?」

幕之内さんと会うのを、断る訳が無い。

もちろんいいですよ! と答えようとした時、ちらりとカレンダーを確認した私は、ハッと目を見開いてしまった。

14日には赤く丸がしてあり、『夜勤』と大きく書かれている。
しかも、その下には『祝勝会』とも…。

明日の朝からは、この前のお兄ちゃんの試合の祝勝会を、地獄会の人達とする予定だった。
私も役割があるので、欠席する訳には行かない。

「すみません…明日はちょっと用事が立て込んでしまっていて。
別の日なら大丈夫なんですが…」

申し訳ない気持ちでいっぱいになり、電話の向こうの幕之内さんの表情を想像する。

「あっ。 そ、そうですか…。
……では、また改めて電話しますね」

「本当にすみません…」

こんなに予定が重なるなんて滅多にないのに。 なんてタイミングが悪いのだろう。


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