Long Novel
□W
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Valentine's Day W
Side 菜々子
「はぁ…」
公園でベンチに座ったわたしは、一人ため息をつく。
時刻は既に夕暮れ。
吐いた白い息が、寂しそうに消えていった。
時折吹く冷たい風が、刺さるように身に染みる。
(もう、なんだって冬ってこんなに寒いのよ)
そんな事まで考えて、苛々してしまう始末。
そもそも、バレンタインデーを冬にしたのが間違いだと思う。
そりゃあカップルの人達は、熱々で寒さなど感じないのだろうが…。
今のわたしには、かなりキツイ。
(…わかってたんだけどなぁ)
次第に暗くなっていく空を見上げる。
全てわかっていた。
一歩さんがああ言う事も、久美さんとは両想いだって事も…。
今回で、キッパリ気持ちを諦めようと告白をしたけれど、想像以上に辛かった。
もっと、気持ちがすっきりするかなと思っていたのに…。
(駄目だな…わたし)
ぐっと口を結び、下を向く。
ヤバい、泣きそうだ。
家に帰るまでは我慢しないと、もし誰かに見られたりでもしたら…。
唇を噛みながら、ぎゅっと拳を握り締める。
その時。
タタッと駆け寄る足音が、近くに聞こえた。
「…菜々子さん?」
わたしを呼ぶ声に、驚き顔を上げると。
「……」
そこには…きっとロードワーク中だったのだろう。
汗を流した今井さんが、心配そうにこちらを伺っていた。
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