Long Novel

□W
1ページ/6ページ





Valentine's Day W
Side 菜々子




「はぁ…」

公園でベンチに座ったわたしは、一人ため息をつく。
時刻は既に夕暮れ。
吐いた白い息が、寂しそうに消えていった。
時折吹く冷たい風が、刺さるように身に染みる。

(もう、なんだって冬ってこんなに寒いのよ)

そんな事まで考えて、苛々してしまう始末。
そもそも、バレンタインデーを冬にしたのが間違いだと思う。

そりゃあカップルの人達は、熱々で寒さなど感じないのだろうが…。
今のわたしには、かなりキツイ。

(…わかってたんだけどなぁ)

次第に暗くなっていく空を見上げる。

全てわかっていた。
一歩さんがああ言う事も、久美さんとは両想いだって事も…。
今回で、キッパリ気持ちを諦めようと告白をしたけれど、想像以上に辛かった。

もっと、気持ちがすっきりするかなと思っていたのに…。

(駄目だな…わたし)

ぐっと口を結び、下を向く。
ヤバい、泣きそうだ。
家に帰るまでは我慢しないと、もし誰かに見られたりでもしたら…。
唇を噛みながら、ぎゅっと拳を握り締める。


その時。
タタッと駆け寄る足音が、近くに聞こえた。

「…菜々子さん?」

わたしを呼ぶ声に、驚き顔を上げると。

「……」

そこには…きっとロードワーク中だったのだろう。
汗を流した今井さんが、心配そうにこちらを伺っていた。


_
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ