Long Novel

□U
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Valentine's Day U
Side 一歩




「こんにちはー」

まだまだ風が冷たい2月の夕方、僕がいつものようにジムに入ると。

「よーう!一歩!」

「今日は早ぇな!」

木村さんと青木さんが、笑顔で出迎えてくれた。

「そ、そうですか?
いつもこの時間ですけど…」

今日の二人の様子は、なんだかいつもと違っていた。
ソワソワとしていて、落ち着きが無い。

「お前も、あれなんだろ?ん?
やっぱり気になるよな〜」

ニヤニヤする青木さん。

「ま、チャンピオンと言えど、俺には勝てねぇだろうけどな…」

同じく、ニヤニヤする木村さん。
…少し不気味だった。

「バーカ!勝つのは俺だ!」

「お前は、トミ子から貰えりゃーそれでいいだろ!」

一体何の話をしているのやら。
わいわいと騒ぎだした二人を置いて、僕は近くにいた学くんに駆け寄る。

「ま、学くん。
どうしたんだろう、あの二人…?」

怖ず怖ずと尋ねてみると、学くんは驚いた表情を見せた。

「え?先輩、今日が何の日か知らないんですかぁ?」

「今日?何かあったっけ」

「もー!バレンタインデーですよ!
バ.レ.ン.タ.イ.ン!」

「あ、そうか」

すっかり忘れていた。
そういえば今日は2月14日、バレンタインデーだ。
自分には縁が無い日だから、まるで覚えていなかった。

「…それで二人共」

「来た時から、ずっとあの調子ですよ」

二人は髪を整えたり、外をちらちら気にしたりして。
全く練習に集中していないようだ。



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