響合高校

□これが…(中略)…ような……
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『これが2年S組の授業風景っていうか最早コレ授業とは言えないような……』




みーん。
蝉が鳴いています。
みんみんみんみん、と少ない生命が尽き果ててしまうまで、一生懸命鳴き続けます。
その中の一部は子供の夏の遊びの定番となっているセミとりによって意味なく捕えられ、
残り少ない寿命をさらに縮められたりしてしまいますが。
哀れですね。

そんな蝉が鳴く森の中に、全体的に白っぽい、長方形の結構な大きさをした建物が建っていました。
ほぼ正方形に並んでいるそれらは角で繋がっていて、その真ん中には中庭がありました。
この中庭はなかなかの広さを持っており、噴水や花壇、そして所々に木々が立っています。
それら全てはきちんと手入れが行き届いていました。
その建物の隣には山があり、建物裏側の一部に日陰をつくっています。

建物から見てその山とは反対方向に、
小さめのマンションのような形をした建物が数軒、きれいな扇形をして並んでいました。
大きい建物からは大体200mほど離れています。
その建物にはそれぞれ部屋がいくつかありました。
あまり広くはないその部屋には机やタンスやベッドなど、生活に必要な家具が置いてありました。
まァ当たり前か。
そしてお世辞にもきれいとは言えない、少々物が散乱している部屋のベッドの上に、
この部屋で生活している少年(とも青年とも言えるけど、まァ少年でいいや)がいるのでした。

彼は目を閉じて規則正しい呼吸をしています。
つまり寝ています。
ベッドの横には、目覚まし時計が落ちていました。
文字盤を覆うガラスのカバーに小さなひびがあります。
タイマーはすでに止まっていました。
がらがら、ベランダの窓が開きました。
これは明らかに鍵の掛け忘れですみなさんは気を付けましょう。
そして窓を開けたのは、もちろん今ベッドで幸せそうな顔をして寝ている少年ではありません。

「またか……。起きろ!」

男とも女ともとれる声でした。
その声の主はそうぼやきつつベランダから部屋に入った後、
床に転がっていた目覚まし時計を拾いおそらく定位置だったであろうベッドの脇におき、
それから寝ている少年に対して怒鳴ります。
しかし少年は起きる気配まったくなし。

「起きろー! 起きろ起きろ起きろ起きろーっ!」

それでも声の主は怒鳴り続けます。
その彼は少年と言えば少年ですが、寝ている少年と比べれば大分小さいです。
まだ子供です。
白い半袖のシャツに紺色のズボンを着ています。
そして学校指定の赤と黄色のネクタイをしています。
要するに制服姿ですね。
ちなみにこいつは軽く不法侵入ですが、そんなことはちっとも気にしてないご様子。

「お、き、ろ! おーい!」

その少年は今度は寝ている少年の肩をやや乱暴めに掴み、
先程から言っている言葉を叫び続けながら前後に激しく揺らします。
揺らし続けます。
まだ揺らします。

「おまえは運命の某金髪の親子かーっ!」

それでも起きる気配がまったくないので、
今度は軽く問題発言をしながら横になっている少年の上にのっかります。
ちなみに軽く勢いをつけて膝からがっつりといきました。
ぎしっ、とベッドが軋む音と、
いきなり体重をかけられぐきっ、と体が悲鳴を上げる音が同時に聞こえました。
似たような行動を数分の間色々と試すように繰り返していると、
さすがの青年(なんかもう面倒くさいからこいつこっちの表現でいいや)も、

「うーん、わかったって……」

ようやくそう呟きながら、もそもそと動きます。
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