小説と思われるもの(主に短編

□温もりを求めて
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『温もりを求めて』




現在、夜中の某時間。
窓から月明かりが差し込み始め、クラトスは目を覚ました。
ある宿屋の1部屋の天井が視界に入る。
なんだか、ものすごく嫌な悪夢を見ていた気がするな、
とクラトスは思い、ベッドから上半身だけを起こし、右側を向いた。
まず壁が目に入り、視線を上へと移動させると、窓が見えた。
そのガラスの奥には、満月に近い月と、たくさんの星が見える。

しばらく窓からの夜空を眺め、クラトスは視線を元に戻した。
そして、今度は左側を見る。
ベッドがあった。
毛布があった。
枕が見えた。
銀色と茶色の塊が2つ並んでいた。


「……ふっ、私はいつからドリーマーになったのだろうか。まだ夢を見ているとはな……」


視線を戻し、小さな声でつぶやくクラトス。
現実逃避はよくない。
そして呼吸を整え、再びゆっくりと左側を向く。
再確認。
よく見れば、その隣にあるベッドには、黄色と銀色の塊が2つ並んでいた。


「……あれは、夢ではなかったのか……」


呟きと共に、がっくりとうなだれるクラトス。
現実と向き合う前にまず勘違いに気づけ。
そんなクラトスに構わず、4人は平然と寝ていた。
気温が低めなため、毛布をしっかりと被っている。
その幸せそうな寝顔を、というかロイドを眺めながら、


「……親として、子が道を外したら正してやるべきだ。
 しかし、ロイドがそれで幸せなら……」


何やら勘違いした状態のまま真剣に悩み出した。
迷惑この上ない。
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