短編夢
□月下美人
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寝間着から覗く胸元に、隠し持っていた短刀を宛てがい振り上げた。
何をどうしても手に入る事がないのなら、自分ではない誰かのものであり続けるのなら。
―――己が手で壊してしまえ。そうすれば、貴方は私だけのものになる。
切望し、恐怖と希望を、短刀を握る両手に込めた。
「死ぬ程、お慕いしております…曹丕様」
心臓に、狙いを定めて。
月の光が室内を淡く照らし、短刀の刀身が鋭く光る。
鏡のように磨き上げられた刀身に、貴方と私の顔が映った。
「―――…殺す程、私が憎いか」
「…!!」