短編夢
□月下美人
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皆が寝静まる刻、暗闇に微かに響くのは、殺しきれなかった私の足音だけ。
辿り着いた貴方の部屋の前。不躾にならぬよう、用心して扉を開いた。
奥の寝台の上に、貴方は静かに横たわっている。
音をたてないよう注意を払い、後ろ手で扉を閉め、貴方の近くへ。静か過ぎるその部屋の中で、規則的な寝息が私の耳に嫌でも届いた。
…眠っていても、美しい御方。
貴方に対する想いだけなら、私は奥方様にも負けない自信があります。
だからこそ、耐えられない。
どんなに想っても、それを知る事のない貴方を見続ける事が。