短編夢
□月下美人
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【月下美人】
鳴呼、貴方はなんて愛しくそして憎い御方。
どうして私なのでしょう。どうして貴方なのでしょう?
貴方でなければ、私はこんなにも苦しまずに済んだのに。
貴方は、次期魏王。周囲の期待と羨望の中に身を置いて。
そして傍らには、美しく聡明な奥方様。
私は、貴方様に仕えるあまりにも平凡な侍女。
鳴呼、私はなんて恐ろしい想いを抱いたのでしょう。
決して手に入らないのならば、せめて私の手で、全てを壊してしまいたいと
…そう、思うのです。
ある夜、深い闇の中。
月の光だけを頼りに、貴方へ。