雑話

□悪食レストラン
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ここは白い森。
そこにたたずむレストラン。
そんなレストランに訪れる者が今日もまた一人。




カランカラン。
鳴り響くドアベル。


「いらっしゃいませ。御予約は?」

その音に店の主であるアルビレオが振り向けば,今まさに客が扉をくぐり抜けようと苦戦している最中であった。

「いやぁ,相変わらずここの扉は小さいねぇ。」
アハハハと笑いながらぬぅっと現れたのは2m強はあるド派手な大男,テントカント。
一応アルビレオの昔馴染みであるが。

「それは貴方がデカ過ぎるんですよ」
そんなテントカントを見やりもせず,つんとしながらアルビレオは言い,そんなことよりと続ける。
「そんなことより,私は貴方様の御予約を承っておりませんが」
「そんな他人行儀な事言わないでおくれよ,アルビレオ。私と君の仲じゃないか」
「他人行儀?」
そうテントカントの言葉を繰り返すと,アルビレオはその赤い瞳を見下す様に細め,ふんと鼻で笑う。
「他“人”行儀とはおこがましい。今更人間ぶるおつもりですか?この悪食が」
「んー,常連客専用裏メニューとは言え“ああいう料理”を扱ってる時点で君も同じだと思うよ。てゆうか君も食べるじゃないの」
「私はたしなむ程度ですが?」
室内の温度が一気に下がり,重い沈黙が二人を包む。
睨み合う両者。

「まあ,良いでしょう。さっさと御席に御着きやがって下さいませ」
チッと小さく舌打ちしながらアルビレオは沈黙を破り,テントカントに席を用意する。
「君はホント口が悪いよね,他のお客にもそんななの?」
やれやれと苦笑しながら席に着きながら言う。
「そんな訳無いでしょう。貴方だけですよ」
「え?そうなの?何か照れるなぁ,私だけ特別だなんて」
「ええ,特別ですよ。あれだけ言っても何度も何度も予約無しのゲリラ来店しやがる御馬鹿様は貴方だけですからね」
「まったく,アルビレオはツンデレなんだから…」

ダァンッ!!!!
凄まじい音をさせてグラスを置いたアルビレオは,さらに凄まじい目でテントカントを睨み付ける。

「良い歳こいて妙な言葉覚えてんじゃねーで御座いますよ」
「はい……」
ドスの効いたアルビレオの声にテントカントは少し怯んだ。
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